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2009.08.22

★異常な耳と正常な?脳

 息子の右耳が悪くなって、音のことをちょっとだけ調べる機会ができた。病気も悪いことばかりではない(悪いことがほとんどすべてだけれど)。

 ピアノの鍵盤を叩いて出る一番高い音がおよそ4000Hz。もっと高音の聴力に障碍は残っているが、その高さなら聞き取れるようになっているので、耳鳴りを別にすれば、これ以上よくならなくても特に支障はないんじゃないかという気もしていた。

 ところが、驚くべきことに、チッチッという鳥の鳴き声は、その音より高いのだ。バードウォッチャーの間で有名な、高齢になると聞こえない代表としてヤブサメの声があるが、そんな鳥を持ち出すまでもなく、そこいらにいる鳥の普通の地泣きや囀りが、息子の右耳には聞こえない。

 カナディアンロッキーでは、トレイルを歩きながらのバードウォッチングが、メイン行事の一つであった。

 耳は異常だが脳は正常なので(逆じゃなくてよかったかもしれない)、入ってきた音の信号は正しいものとして情報がきちんと処理される。
 つまり、鳥が右側で鳴いた場合、本来なら左よりも右の方に音が大きく、かつ、早く入るので、音源が右側にあるということがわかるはずなのに、右が聞こえないために左だけに音が入るものだから、脳は当然、音が左から聞こえていると判断するのだ。

 結果、鳥は右にいるのにその鳥を見るために左を向くことになり、そうすると今度は背後にいる鳥の声がまた左にだけ聞こえてくるものだから、さらに左を向くことになる。そうしても、相変わらず声は左からだけ聞こえてくるわけで、また左を向く。
 この調子では、永久にぐるぐる回らざるをえない。

 賢明な?息子は、さすがにぐるぐる回ったりはしなかった。正常な脳の別の部分を使って、すぐに「鳥がどっちにいるかわからへん」という結論に達し、「どっちで鳴いているか教えて」と言うようになった。

 ピアノの鍵盤の一番高い音が聞こえるなら、クラシック音楽だって鑑賞できるじゃないか、などと考えたのは甘かった(実際には倍音やらなんやら、正常な耳でも聞こえないような高周波音まで混じっての音楽なのだろうが)。

 ごく日常的な、バードウォッチング程度の趣味にも大きな支障が出るのだ。他にどんな不都合が出るか、想像もできない。

 今のところ、バードウォッチングは息子の最大の趣味である。その楽しみがスポイルされたりすることがないためにも、完治してくれることを祈りたい。

 発病からおよそ一か月半。残念ながら、そろそろ望みは薄くなってきたような気もするが、まだ諦めたくはない。

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