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2010.11.21

●自衛隊は「暴力(装置)」である

 仙谷官房長官が参議院の予算委員会で「暴力装置でもある自衛隊は特段の政治的な中立性が確保されなければならない」(asahi.com)と発言したことに対し、激しい批判を受け、本人も撤回して謝罪するという騒動があった。

 「法律用語としては不適切で・・・」という長官の発言からは、ご本人はこの用語が「学術用語としては」適切であったことをご存じだったのかとも思えるが、どうもその後の対応を見ているとそうでもないような気がして心許ない。

 いずれにせよ、問題は、「今、何て言った !?」などと、「暴力装置」という言葉に反射的に反感を覚えた国会議員たちの無知にこそある。
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 軍隊や警察などの「暴力(装置)」を合法的に独占することに成功したのが近代国家の特質だということは、経済学や社会学や政治学の世界では常識に属する。

 すぐに「左」だとか言って批判した気になっている単細胞の輩も多いが、この発想は、マルクスをむしろ批判する形で近代資本主義の合理精神を説いたマックス・ウェーバーにその源流があるはずだ。
(ウェーバーは確か、軍隊や警察などの「暴力」を独占する近代国家を「暴力装置」と呼んだと思うのだが、ここでは大きな問題ではない。)

 おそらくは、大学の教養レベルの講義で基本知識として教えられるような内容である。
 その際、まさに「暴力(装置)」という言葉そのものが使われているのがもっとも一般的だろう。本来の「暴力装置」である近代国家に対して「暴力手段」という場合もあるが、国会で問題にされたのは「暴力」のほうであろうから、大きな違いはない。
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 今に始まったことではないが、さまざまな指標において世界で3本5本10本の指に入る国家の政治家が、歴史や社会や国家に関してあまりにも無知すぎるのには啞然とする。
 彼らは国家を動かしている人たちであり、一般人ではないのだ。近代国家に関する最低限の常識ぐらい、そのタームとともに理解していることを期待するのは間違っているだろうか。

 「法務大臣の答弁は2種類でよいから楽だ」という趣旨の発言をした柳田稔氏も、「起訴便宜主義」や「検事を任命するのは誰か」(法務大臣である柳田氏自身です)を知らずに恥をかいたという。
 これもやはり、法務大臣としてはかなり恥ずかしいことだと言わざるを得ない。

 仙谷官房長官を擁護しようとした前原外務大臣の発言もいただけない。

昔よく共産党系の本も読まれていたんだろう。その中に暴力装置のような言葉があったやに本人から聞いた。それが間違って出てきたものだと思っている。あくまでも本音ではなく、言葉が誤って出たものだと認識している。(asahi.com)

 「外務大臣」がこんなことを恥ずかしげもなく言っているのを聞くと、日本の外交がダメなのも納得させられてしまうのが悲しい。「本音」も「誤って」も関係ない。学問的な常識なのである。

 前原氏と言えば、北方領土が「不法占拠」されているという言わずもがなのことを口にし、メドベージェフ大統領の北方領土訪問への誘因を作ってしまったことも記憶に新しい。
 麻生太郎氏が考えもなくそう口にして、かえって「国益」を損なってから1年半しか経っていないのに、せっかく政権交代して、いったい何をやっているのか。

 石原慎太郎東京都知事は仙谷官房長官憎しのあまり

軽率というか、ばかというか。はなはだ好ましくない発言で、陳謝で済むものか。
下手をしたら暴力団と自衛隊を重ねて想定するようなイメージにつながりかねない。(asahi.com)

などと言っているが、軽率でバカなのは石原氏の方である。少しは勉強して欲しいものだ。

 仙谷氏も言っているとおり、自民党で防衛大臣を務めた石破茂氏もかつて「国家の定義というのは警察と軍隊という暴力装置を合法的に所有するというのが国家の一つの定義(原文のまま)」(石破氏自身のブログより)だと発言しているのだ。
 2006年の石破氏の共著書『軍事を知らずして平和を語るな』にも、「暴力装置というのは、すなわち軍隊と警察です。日本では自衛隊と警察、それに海上保安庁も含まれます」と書いている。

 今回の騒動の後なので奥歯に物の挟まったような批判を仙谷氏に向けるのを忘れてはいないが、そんなもの、近代国家論の常識だからこそ、「右で軍事オタク」の石破氏も「元左翼」の仙谷氏も同じことを言うのである。
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 私が見ていないだけなのだろうか。「警察と軍隊という暴力(装置)を合法的に「独占」所有するというのが「近代」国家の一つの定義」であるというのが常識であることに触れた報道が少ない(ない?)ことも問題だ。せっかくの勉強の機会なのに。

 最後にもう一度言う。「自衛隊は暴力装置である」という発言が問題なのではない。そんな常識すら知らないまま政治を司っている、無知なくせに傲岸な連中こそが問題なのだ。

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コメント

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 警察も軍隊もウェーバーが言う前から暴力装置であって、その力で対象を制圧するのが、警察や軍の誉れだと思います。つまり、弱い警察や軍は意味がないわけでして、まして負けた軍は武装解除されます、……。

 ただいつも問題になるのは、制圧を指示する者と、制圧される者との関係が複雑だから人類史はダッチロールをしてきたのでしょう。

1.ナチスドイツは複雑でした
 ドイツ国軍と、ナチス親衛隊(秘密警察含む)と、普通警察があって、調整が難しかったようです。

2.私兵
 私兵だらけの国は近代国家ではなさそうですが、全世界全人類が近代国家を上等な国家とはみなしていないところに、ここ百年の難しさがあると思います。

 と、そういうわけで、ひごろの政治談義とちがって「暴力装置」発言に限っては、「何をみんなさわいでおるのじゃ」と、あっけにとられていました。つまり、お猿の尻は赤いと、事実を言っただけで、大騒ぎになるのが不思議だったのです。

投稿: Mu | 2010.11.22 20:45

 コメント欄のお名前を拝見し、何か叱られるのではないかと緊張してしまいました ^^;

 世界には、まだ部族社会が生きている国家がありますね。そこへ西洋近代国家の枠組みを押しつけたことから事態がより複雑に悪化したような例もたくさんあります。
 やや別件ですが、イラク戦争後のイラクで、アメリカの民間武装会社が人を殺している現状などには戦慄を覚えます。もちろん、アメリカ軍という「合法的」暴力が意図的・非意図的に無辜の民を殺戮しつづけているのも論外ですが。

投稿: Wind Calm | 2010.11.22 22:05

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