2015.12.07

★12月のある晴れた午後に100パーセントの女の子と出会うことについて ──Barnshelf の妖精

 ──このエントリはフィクションです。
 タイトルは村上春樹の短編をもとにしていますが、内容は何の関係もありません。
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 「12月のある晴れた午後に100パーセントの女の子と出会うことについて ──Barnshelf の妖精」

 長い間バイクに乗っていなかった。乗れそうな日は、天気が悪いとか何か用があるとかが続いた。たまに何の予定もない休日があっても、どんより曇っていたり寒風が吹きつけたりするようでは、なかなか走ろうかという気になれなかった。「たまにはエンジンをかけてやらないと」などと考えるのは、購入してから初めてのことかもしれない。

 そんなことを考えていた12月のある晴れた日、リビングでブランチをとっていると、いつになく心地よい暖かみに包まれる気がした。南に面した掃き出し窓から差し込む光が背中を温め、足もとにも日だまりを作っている。床暖房も入れていないのに、下から暖かくなってくるのがわかる。振り返って空を見上げると、最近目にしたことのないような青い冬晴れだった。窓を開けても「放射冷却で冷え込んでいる」というような気配はなく、いわば小春日和である。「よし、ちょっと走ってこよう」と思うまで、時間はかからなかった。

 ちょうど気になっていた雑貨屋が兵庫県の三田市にあったので、そこを一応の目的地にした。走ること自体を目的にするよりは、その方が少し満足感が高いことは経験からわかっている。バイクジャケットのインナーであるダウンの服をクローゼットから引っ張り出したが、少し考えてセーターですませることにした。
 外へ出ると快晴だった。バイク装備で玄関先をうろうろしていると、少し汗ばんでくるほどだ。それでも、走り出せばすぐ寒さが正面からぶつかってくる。隙あらば前に出ようとする車両の群れを後にし、「道の駅いながわ」を左折して、晩秋の色濃い「北摂里山街道」に入るころには、グリップヒーターのスイッチを入れた。
 まもなく冬だ。いや、今日だけが秋で、もう冬なのだ。

 目的地の Barnshelf(バーンシェルフ)までは、50km足らず、1時間15分ほどの道のりだった。丘の片隅を平地にして砂利を撒いたような駐車場を目にしたときには、すでに通り過ぎそうになっていたので、そのまま進んで次の狭い道に入り、店の東側に出た。バイクくらいならその辺に駐められるかとも思ったが、適当な場所も見当たらず、入口も西側のようだったので、あきらめて駐車場まで戻り、隅の方にバイクを駐めた。他に車は一台もいない。
 煉瓦敷きの歩道を歩いて店に向かう。牛舎を改装した建物だということだが、むしろ廃工場のような佇まいだった。積み上げたブロックに波打ったスレートの壁、無骨な窓。こんな田舎のこんな店に、いったい誰が来るというんだろう? 客もいないようだし、そもそも、営業しているんだろうか・・・

 どこから入るのかもわかりにくく、少し探して PULL と書かれたドアを開けると、外観からは想像しにくい、ちょっとおしゃれな空間が広がっていた。BGMが静かに流れ、コーヒーの香りが漂う。
 店の主人に軽く挨拶してから、店内をまわる。案に相違して、先客の女性が一人、窓際の席に座って何か飲み物を飲んでいるようだった。その近くには若い男性が立ち、私と同じように商品を眺めていた。

 雑貨屋というかセレクトショップというか・・・あとで見たウェブサイトの文言によれば、「古書を中心としたこだわりの本棚と衣食住にまつわるさまざまなアイテムを新旧和洋問わず集め」ている店とのことだが、その言葉通り、まことに「さまざまなアイテム」がとりとめもなく置かれていて、なぜこんなものがここにあるのか、こんなものがここで売れるのかと思わされた。
 靴下や服、台所用品や食器、かばんや文房具・・・なんかが、必然性なく並んでいるのである。極めつけは本で、少ない在庫の中に『フィールドガイド 日本の野鳥』はともかく、「日本野鳥の会」創設者である中西悟堂の本なんかが混じっているのには驚かされた。ちょっと大きな書店に行っても、中西悟堂の本なんて置いてやしない。かといって、この店がバードウォッチングの本を中心に集めているのかというと、そんなこともない。
 本に限らず、衣服にせよ食器にせよ文房具にせよ、どれもが店主の趣味によって選び抜かれたものであるだけに、とりとめなさの中にも奇妙な統一感があって、こんなふうに気に入ったものに囲まれて暮らせたら素敵だろうなと思わされる。「もし自分がこんな店をやるんだったら、どんなものを置くだろう?」などと考えながら、「こだわりの」アイテムを見て回る。
 それにしても、こんな店がやっていけるのか・・・と思っていると、3周年を記念して作ったというカップを見つけた。少なくとも3年以上は続いているわけだ。他にも収入の道があるのだろうか、それとも、まさかこれだけで食べているのだろうか。いずれにせよ、好きなことがあってそれを職業にできる人は幸いだ。

 いつ気づいただろう?

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2007.06.15

◆浮世の風景

 こんな話題に触れるのはたぶん初めてだと思うのだが・・・

 Jリーグ、ジュビロ磐田の菊地直哉選手(22)が、静岡県警に県条例違反で逮捕された。いわゆる「淫行」である。

 この選手については聞いたこともないので、どういう人なのかはわからない。ただ、2004年、19歳のときにアテネオリンピックに日本代表として出場したというから、相当な選手なのだろう。

 だが、ここで書きたいのは彼のことではない。

 報道を総合すると、要するに、彼は浜松市内で自転車に乗っていた女子高生(15)をナンパし、その後、車の中で性行為に及んだらしい。

 不思議なのは、女子高生が彼のことを知らなかったという点だ。

 いやもちろん、わたしも知らないのだから知らないこと自体は不思議ではない。衝撃を受けたのは、15歳の女子高生が見ず知らずの22歳の男にナンパされ、その日のうちに性行為に及んだという事実である。

 強制猥褻とか強姦とかではないようだし、あくまでも合意の上の出来事らしい。それに、この女子高生は彼が忘れた財布を警察に届け出るような正直な女の子である。

 まあ、それが菊地選手の逮捕につながってしまったわけだが(なんで?)、そういう女の子(15歳!)が、見ず知らずの男にナンパされてその日のうちに・・・というのがどうしても納得できない。

 わたしの方が古すぎるとか浮世離れしているとか、やっぱりそういうことなのだろうか・・・

 実はかなり強引に無理矢理・・・というのであれば(つまりはもっと凶悪な犯罪であった方が)、むしろまだ救いがあるような気がして、妙な気分になってしまう。

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2006.04.23

★ひと目ぼれ・・・

 「ひと目ぼれをしたことがありますか?」みたいなアンケートをたまに目にする。こういう質問が成立するのは、「ひと目ぼれをしたことがない」人がけっこういることが前提として存在するからだ。

 まさか、と思う。

 自慢じゃないが(ほんとに何の自慢にもならない)、ひと目ぼれ以外はほとんど経験したことがない。「ほとんど」と書いたのは、具体的にすぐ思い出せる経験がとりあえず一つもないからであって、もしかするとほんとにぜんぜんないかもしれない。

 何週間か前の新聞に、日本人は世界でもひと目惚れ率の際だって高い国民だという調査が掲載されていた。個人的なことだと思っている自身のふるまいも、こうして「国民性」の一部に位置づけられてしまうのはあまり嬉しくない気がするのだが。

・・・

 さて、息子の自転車を調整するために久しぶりに立ち寄った自転車屋で、たまたま店の奥にあった自転車に目が止まってしまった。なんかもう、文句なしにかっこよく、細部に至るまで美しい。運命的な邂逅、好きな言葉で言えば、必然的偶然だ。そしてお決まりのひと目ぼれである。

 2週間ほどの間、悶々とする。最終的に2日連続自転車屋に行って、2日目に注文する。予定調和だ。最初から買っておけば良かった。

 買う前に少しだけ試乗させてもらう。予想はしていたのだが、今乗っている自転車よりも格段に固い乗り心地で、お尻も痛くなりそうだ。坂だらけの自宅周辺と頼りない脚力を考えれば、変速機がロード用なのもいただけない。
 だが、試乗する段階では、もはや購入は決定している。「あばたもえくぼ」でも「恋は盲目」でもない。欠点は欠点として理解していても、ひと目ぼれには勝てないのだ。

 困るのは、相手が人間の場合とは違って、ちょっとしたお金を出すだけで、ひと目ぼれが簡単に成就してしまうことだ。それを「喜ばしいのは」と思えないところが性格の暗さである。

 いずれにせよ、まだ手にしていないこの自転車とは苦労をともにしそうである。決して多くはない、成就した本当のひと目ぼれが、やはりそうであったように・・・

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