2017.09.14

■目に余る誤訳

 書き出すとキリがないし面倒くさいと思って今までほとんど書いたことがなかったのだが、直前のエントリに触発されて、つい先日「これはいくら何でも」が2つ続いたことを書く。
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 映画の吹き替えや字幕、特に字幕には制約が多く、元の台詞の1/3も訳せていないみたいなのがよくある。他にも、大胆な意訳や「超訳」もしばしば見受けられる。というより、省略と超訳が基本線みたいなところがあって、それは確かに仕方ない面もあると思う。
 ただ、その制約の中でも「もっとこう訳した方が」というのが非常に多い気はするのだが、それはこの際 問うまい。

 問題は、明らかな誤訳である。

 先日、「ER 緊急救命室」を見ていると、ヘリコプターのパイロットが "I'm gonna shut down for autorotation." と叫ぶ台詞があった。エンジンに異常が生じたので、安全に降下すべく、「オートローテーションを行うために(for autorotation)エンジンを止める(shut down)」、という意味である。

 オートローテーションというのは、ヘリコプターのエンジンを切って動力のない状態にし、自重で地面に近づいていく過程で、ヘリのローター(羽根)が風を受けて自然に回ることを利用して、その抵抗を使って安全に不時着する技術である。

 知り合いによると、大袈裟に言えばヘリの操縦訓練の半分近くはオートローテーションに当てられるというような話であった。
 「半分近く」というのはいくら何でも誇張だと思うけれど、ある程度の高度か速度があれば(両方あるのが理想)、ヘリコプターはエンジンが止まってもそうやって安全に降りられるように設計されており、操縦者もその訓練をしっかりと受けている。

 実際、ER のヘリも、誰も怪我することなく無事地上に降りた。

 その "I'm gonna shut down for autorotation." (「オートローテーションのために(エンジンを)切る」)の字幕が、なんと、

  「オートローテーションを中止する!」

であった。

 どうしてプロの翻訳家がこんな初歩的な誤訳をテレビで放送してしまうのか。

 「"autorotation" という「専門用語」の知識がなかったから」などというのはまったく言い訳にならない。そんなもの、1980年代の『リーダーズ英和辞典』(研究社)にだって載っている。
 さらに、万一その意味がわからないとしても、"shut down for autorotation" なのだから、「オートローテーションのためにシャットダウンする」という構文なのは明らかだ。
 この文型で autorotation を shut down の目的語にして訳すなど、ちょっと気の利いた生徒なら高校生でもやらないような間違いである。
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 「まさか、スクリプト(脚本)を見ないで聞き取りで訳しているとか、意味は何でもいいから雰囲気だけわかればいいとか、そんなことはないだろうなあ」と思って検索すると、まさに ER の翻訳者本人が、いかに苦労して訳しているかという講演をしている記録が見つかった。

 それによると、もちろんスクリプトを手に入れて、数多い制約の中、いかに努力して完璧な翻訳を心がけているかという話が、これでもかというほど述べられていた。特に、医学用語や表現に関しては医学監修者と綿密に打ち合わせて正しくかつ自然な日本語になるよう努力していたそうだ。

 もちろん autorotation は医学用語ではないが、それにしてもあまりにお粗末だし、この間違え方はいわゆるケアレスミスではない。
 字幕や吹き替えの制約も言い訳にならない。

 「オートローテーションを中止する!」と訳せるなら、
 「オートローテーションを開始する!」と正しく意訳できるはずだ。

 もし意味がわからないなら、いっそのこと「不時着する!」とでも訳せば、通常の字幕としてはぎりぎりセーフではないだろうか。
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 このような、「どうしてこんな・・・」と思うレベルの誤訳が、字幕にはしばしばある。冒頭に「書き出すとキリがないし面倒くさい」と書いた所以だ。

 ネットを見ると、字幕の大御所をはじめ、プロの翻訳家のお粗末な誤訳の例がこれでもかというほど指摘されている。
 (大御所を除けば)多くの場合、「忙しすぎて、時間がなくて、やっつけ仕事をしてしまいました」みたいなことなのかもしれないが、「それにしてもひどい」というのがネット世論のようで、私もそれに同調せざるを得ない。
 いったい、どんな人たちが翻訳しているのか、また、それほどの誤訳を積み上げても一線で活躍し続けられる理由は何なのだろうかと考え込んでしまう。
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 映画やドラマの誤訳の話はこれまでほとんど書かなかったし、この件もここに書くつもりはなかった。
 書く気になったのは、次の回の ER の放送で、またとんでもない誤訳を見つけてしまったからである。まあしかし、これはケアレスミスなのだが、

A:レガスピー先生よ
B:写真家の?
A:ええ
B:必要ないわ(※筆者注:←の訳は記憶による)

 見ていて???が頭の中で点滅した。レガスピーが写真家だとかいう話があったっけ? どうして "Psychiatrist?"(「精神科医?」) を「写真家の?」って訳すんだろう?

 (皆さんはすぐわかりましたか? 私は10秒近く???が続きました。その後やっと、「せいしんか」を「しゃしんか」と間違えていることに気づきました。)

 まあ、上にも書いたとおり、これはケアレスミスである。
 ただ、字幕を入力した人の単純ミスかと思ったら違っていた。何と、吹き替えに切り替えて聞いても、声優がばっちり「しゃしんかの?」と発音していたのだ。どうしてこの場面で唐突に「写真家」が出てくるのか? 誰かどこかで気づかなかったのだろうか・・・

 この「連続技」があって、前から溜まっていたフラストレーションをここで一度は晴らしておきたい気分になってしまった・・・
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 翻訳のご苦労は大きいと思う。でも、視聴者はそれを頼りに見ているのだ。もとの言語がわからなければ(ある程度わかる場合ですら)、翻訳した日本語がその映画やドラマ「そのもの」になってしまう。
 その日本語が、まったくの素人から「これでもか」というほど間違いを指摘されるようなものであっては困るのである。私たちは脚本すら見られないのだ。

 「人間のすることだからミスはある」という程度なら、ネットの誤訳騒ぎはあれほど盛り上がらない。

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2017.08.03

★ハドソン川の奇跡

 トム・ハンクス主演、クリント・イーストウッド監督。

 実に久しぶりにほとんど手放しで賞賛できる映画を見ました。

 ぜひ皆さまも予備知識なしでご覧ください。
 とは言っても、ご承知の通り、誰も死にませんし。

 不時着水の時のCGを除けば、ほとんど文句のつけようがありません。それだけに、そのひどさが際立ちますけど。
 もっともっと実際の着水に近く作れたはずなのに、わざとああいうふうに作って大失敗していると思います。

 まあでも、そんなことはともかく、ぜひ。

(Sully, 2016 U.S.A.)

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2017.01.24

■ドローン・オブ・ウォー

 まだ途中までしか見ていないのにこういうことを言うのもなんだが、現代に生きるだれもが見るべき映画である。

 これが未来のことではなく、むしろ過去のことだというのがまた・・・

 しかも、あのオバマ政権下ですら、こんな戦争が行われていたのだ。
(物語の細部はもちろん創作だろうが、ドローンを利用したこの種の作戦が日常的に行われていた(る)のは周知の事実である)。

 未来はいったいどうなるんだろう?

(Good Kill, 2014 U.S.A.)

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2016.08.24

★Welcome to HEL(L)

 あらゆる障害を乗り越えて、フィンランドのヘルシンキまではたどりついた。

 東日本を襲った台風はむしろ、われわれには味方して、フライトがキャンセルになった乗客でホテル(日航関西空港)があふれたために、望外のアップグレードを得、ワンフロアに1部屋しかないスイートに泊めてもらった。
 台風の被害を受けた方々には申し訳ないが、それはちょっとした僥倖だった。
 しかしその時、すでに「運を使い果たしたのではないか」という不安がまとわりつきはじめていた。

 定時運行率世界一だか欧州一だかを誇るフィンランド航空は、定刻より10分早く出るというので喜んでいたが、関空での離陸許可が遅れ、結局定刻くらいの出発になった。
 順調なフライトで、定刻にヘルシンキに着く。

 着陸前、フライトアテンダントがやってきて、「乗り継ぎ時間が短いので機の前方に移動してください」と配慮してくれた。お蔭で、15分ほどだけではあったが、ビジネスクラスの旅ができた。

 そこまではよかったのだ。

 だが、単にアイスランドのレイキャビクへと乗り継ぐだけなのに、降機後にセキュリティチェック・入国審査・税関と一通りの洗礼を受けなければならなかった。
 (入国審査は、日本人と韓国人だけはVIP扱いの別レーンでスムーズ、税関は申告なしで素通りしたが、セキュリティチェックで人の話を聞かない家人がひっかかり、数分をロスした)。

 当初からわかっていたのだが、乗り継ぎ時間は40分しかないのだ。
 しかも、実際には出発の15分前にゲートが閉め切られたので、25分しかなかった。

 降機後の一連の洗礼に、バスでのターミナルへの移動、遠くのゲートまでの必死の競歩を加え、アイスランド行きのゲートにぎりぎり滑り込んだ(と思った)。

 ゲートの係員は、われわれを待ち受けていて名前を呼ぶ。

 おお、よかった、間に合った!と思ったのも束の間、ゲートは7分前に閉めきったのでもう搭乗できないという。
 その時点でまだ出発時刻まで8分もあった。少しは食い下がったがやはりどうにもならない。

 教えられたフィンランド航空の乗り継ぎ案内窓口の場所も間違っていた。途方に暮れていたとき、降りてきたパイロットに聞くと親切に連れて行ってくれたのは本当にありがたかった。

 関空からヘルシンキまでの飛行機は満席だったのに、そこからアイスランドへ行こうなどという酔狂な物好きはわれわれ3人だけだったらしい。
 乗り継ぎ窓口の係員は親切にいろいろ対策を考えてくれるのだが、結局のところ、

1.コペンハーゲン経由レイキャビク 21時着
2.ベルリン経由レイキャビク真夜中着
の2択になった。
 もちろん1がいいのだが、コペンからレイキャビクへの座席が確約できないという。もしダメだったら、もう次の日のフライトになってしまう。
 最終的に、2番にせざるを得なかった。

 手続きにものすごく時間がかかったので、その間に電話を借り、レンタカー会社に連絡した(「無料のWifiがあるので、公衆電話はもうどこにもないだろう」と言われた)。

 終わってから、今日の宿にメールした。空港近くの宿なのでこういうことには慣れていて、何時になってもセルフチェックインができるシステムのようで、助かった。
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 今ごろは、もうアイスランドに着いているころだ。だが、いまだにヘルシンキの空港にいて、さらに1時間後のベルリン行きのフライトを待っている。
 それにしても、どうしてベルリンなんかに行かなければならないのだ??

 KIX(関西国際空港)からHEL(ヘルシンキ・ヴァンター国際空港)へ。

 Welcome to HEL(L)という声が聞こえてきた。

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2015.11.13

●空に浮かんだことのない飛行機の免許

 実に半世紀以上ぶりに開発された「国産」(部品の7割は輸入らしいが)旅客機、MRJ(Mitsubishi Regional Jet)が4年遅れの初飛行に成功した。

 まずはめでたい。

 だが、パイロットの名前が出ていたのでどんな人なんだろうと調べるうち、疑問が湧いてきた。

 最大離陸重量が 5700kg を超える飛行機を操縦するためには、機種ごとの免許が必要である。MRJももちろん該当する。

 現実に、パイロットはMRJを飛ばした。まさか無免許ではあるまい。

 しかしながら、MRJが飛んだのは、今回が初めてなのである。これまでただの一度も、主脚が地面を離れたことはなかった。

 ということはつまり、パイロットは一度も空に浮かんだことのない飛行機(MRJ)の免許を既に持っていた・・・ということになる。

 そんなことがありうるのだろうか。
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 もちろんありうるのだろう。

 すべての飛行機には、初めて地面を離れる時が来る。その時にだれも免許を持っていないようでは、その機種は永久に飛ぶことができない(合法的には)。
 今まで気にしたこともなかったが、少なくとも、例えばアメリカやヨーロッパやブラジルやカナダなど、日常的に飛行機を開発している国々には、そのことに備えた法律が整備されているはずだ。

 日本はどうなんだろう。
 飛んだことのない旅客機を飛ばすなんてそれこそ半世紀以上ぶりなのだが、きちんと法整備できているんだろうか。
 シミュレータだけで免許を出すのか、特別な免許を用意するのか、仮の免許のようなものを与えるのか・・・ いずれにせよ、テストパイロットにだけ特別な許可を与える合法的な仕組みを作っているのだと思われる。

 マスコミ報道なんかをいくら探しても、その辺がどうなっているのか解説したものはない(と思う)。

 みんな気にならないのかな(なるほうがおかしいんでしょうね ^^;)。

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2015.08.22

★ウトナイ湖の野鳥サンクチュアリ

 素晴らしい環境なのだが、惜しむらくは新千歳空港のファイナル(着陸最終進入経路)直下に位置すること。ひっきりなしに轟音が響く。

 まあ、仕方ないかなあ・・・


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2015.07.26

●それでも事故は起こるので・・・

 費用と免許の面から単発飛行機(エンジン/プロペラが一つの小型機)しか飛ばせない自家用パイロットの間では、「単発機は飛ぶ前からエマー(ジェンシー)だから」というジョークが、自嘲と自戒とを込めた口調で交わされる。

 エンジンが2つある双発機は、どちらかのエンジンが故障などで動かなくなっても、残った一つのエンジンだけで飛行を継続し、着陸が可能なように設計されている(2月に台湾で起こった墜落事故は、操縦士が誤って正常な方のエンジンを止めてしまったことが原因だということが明らかになった)
 それでも、エンジンが一つ止まると、エマージェンシー(緊急事態)を宣言し、一刻も早く最寄りの空港に着陸することが要請される。

 エンジンが一つ正常に動いていて、特に危険なく飛べて降りられる飛行機でもエマージェンシーなのだから、エンジンが一つしかない飛行機は飛ぶ前から緊急事態じゃないか、というのが冒頭のジョークの趣旨だ。

 だから、パイロットは飛行前点検を怠らない。

 日常的に自家用車に乗っている人で、乗車前にオイルやら冷却液やらファンベルトやらの点検をしている人はまずいないと思うが、飛行機の場合は、チェックリストに従って、かなりの数の点検を必ず行う。

 以前乗っていたセスナ172のチェックリストを久しぶりに引っ張り出してみたところ、
  ・操縦席に落ち着くまでに50項目ほどを点検
  ・エンジンをかけるまでに20項目弱
  ・エンジンがかかってから7項目
   ○管制塔に移動許可を要請
  ・滑走路に向かいながら5項目
  ・滑走路手前で停止して20項目弱(エンジンランナップ(≒試運転)を含む)
   ○管制塔に離陸許可を要請
  ・滑走路進入前に5項目
というように、実に、のべ(=一部重複して複数回)100を超える項目について、Set, Checked, Free, Both, On, Off, Rich, Cold, Locked などと唱えながら、そして時には CLEAR ! などと恥ずかしげもなく叫びながらチェックする。

 そうまでして、何か異常があることは滅多にない。
 実際、私ですら一連のこの手続きを百数十回やっているが、何か異常があってエプロン(駐機場)に戻ったとか、あるいは離陸滑走を中止したなどということは一度もなかった。
 それでも、次回飛ぶときには、また同じ手続きを繰り返す。「まあ大丈夫だろう」などと手順をスキップすることはない。

 だって、飛ぶ前から緊急事態なんだから。
(双発や多発の飛行機でも、チェックの手を抜くことはないだろうと思います。念のため。)

 ただ、もちろん、単発だからといってほんとに「飛ぶ前からエマー」だというわけではない。

 セスナ172のような小型機でも、燃料系統・発電系統・点火プラグその他、可能なものはほとんど二重化され、自動車のエンジンのように頻繁に?止まることはないようにできている。
 一方で、機構がシンプルな分、逆に信頼性は高い。とにかく停止しにくいことを第一に設計されているのだ。
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 それでも事故は起こる。

 パイパー社のマリブ・ミラージュによる今回の調布の事故でもっとも不幸だったのは、地上に巻き添えを出してしまったことだ。
 小型機が関連する事故は少なくはないが、地上の人命を奪ってしまった事故というのはちょっと記憶にない。

 報道から判断すると、何とか住宅地を避けられなかったのかという思いは残る。
 もちろん結果論だが、左旋回せずにまっすぐ飛んでいれば、中央自動車道手前の草地に不時着できた可能性も高い。そうすれば、かなりの確率でだれも死なずにすんだだろう。
 一縷の望みを託して、絶対にやってはいけないと教えられる、滑走路への帰還を試みたのか、それとも、揚力がなくなる失速を起こしてそもそも操縦不能だったのか・・・

 いずれにせよ、落下地点から計算すると、離陸から墜落までの時間はわずか30秒以下だろうから、冷静な判断の余裕もなく、墜落してしまったのかもしれない。

 気になるのは、先に移動していた飛行機を追い越して、滑走路手前でのエンジンランナップ(≒試運転)を行わずに離陸していったという点だ。追い越された飛行機のパイロット(元日本航空の機長)が詳細に証言しているので、それは間違いないだろう。
 もちろん、本来は滑走路手前でやるランナップは、エプロンで?すませていると運航情報官(都の委託職員だから「官」ではないけれど)に無線で申告しているということなので、それはその通りだと信じたい。

 いずれにせよ、何らかの判断ミス・操縦ミスがあったとしても、根本的にはエンジンの不調が原因だろう。

 現役の単発機パイロットには、「飛ぶ前からエマー」のジョークを、自戒を込めてもう一度思い出してもらいたい。
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 末筆ながら、亡くなられた方々に深く哀悼の意を表するとともに、怪我をされた方々の一刻も早いご快癒をお祈り申し上げます。

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2015.06.04

◆ないものねだり

 年に何日もないような清澄な空気。

 街も山も、本来の彩度を取り戻したかのような色彩に覆われ、木々の緑は言うにおよばず、家々の屋根や壁までもが新鮮である。

 季節は初夏になっているので寒いわけではないが、「冴えかえる」という春の季語は、こういう日のことを言うのではないかと思った。

 夕刻、バイクで走っていると、確かに風が少し冷たい。
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 飛びたい、と切実に思ったのは久しぶりだ。その代わりにはならないが、仕事帰り、バイクで高台に登って大阪平野を見下ろす。

 急に視力がよくなったかのような風景・・・
 生駒山系の奥の山なみまで見えたのは、もしかしたら初めてではないだろうか。

 瑞々しい緑は、一夜にして出現したんじゃないかと思うくらい鮮やかだ。
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 「いつもこんなふうに綺麗な緑が見られればいいのに」とは思うものの、毎日が今日のように乾燥していたのでは、木々はこんなふうには育たない。

 地中海に面した南ヨーロッパなら、こんな日は珍しくないだろう。
 だがもちろん、圧倒的なまでの豊かな植生はそこでは望めないのだ。
 
  
 この冴えかえる空気を切り裂いて無音の飛行機を飛ばし、2.0の視力で珊瑚礁も氷河も万緑も見てみたい・・・

 どこをとってもないものねだりである。

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2015.04.24

★印象操作? ──ホンダジェット

 「ホンダの翼 日本の空に」という見出しで、今日(4月24日)の朝日新聞朝刊がホンダジェットの初来日を報じている。
 ホンダが製作したとはいっても、アメリカにあるホンダエアクラフトカンパニーという会社が向こうで作っている機体なので、日本に来るのは今春が初めてなのだ。

 各社報道ではそういう言い方をしていないようだが、日本が製作したジェット機が実用化されること自体、たぶん初めてのことで(もうひとつ、三菱リージョナルジェット(MRJ)という旅客機があるが、まだ初飛行すら終えていない)、まずはめでたい。

 航空ファンの端くれとしては、記事が一面ではなく8面であることがちょっと拍子抜けだが、まあそれはよい。

 気になるのは、「ホンダが米国でつくった小型ジェット機「ホンダジェット」が初めて日本に飛来し、23日午後、東京の羽田空港に到着した」という書き方である。

 これ、素直に読めば、おそらくほとんどの人が「日本に来るのは羽田空港が初」と思うのではないだろうか。
 ところが、実際には、その4日も前の19日に仙台空港に到着している。上記ではまるで、その事実を知らせたくないような書きぶりである。

 おそらくは、報道機関を招待してのお披露目が昨日(23日)の羽田だったのだろうと思う。
 だが、「初めて日本に飛来し」などと言いたいのなら、仙台に来たときに記事にすればいいのに、4日も遅れて、あたかも昨日来たばかりのように報道するのは、どういう意図があってのことなんだろう。

 記事を隅から隅まで読んでも、いつ来日したか、どこから羽田に来たかについては一切の言及がない。もちろん、仙台にも一言も触れていない。
 どうしてこんな、明らかに間違った印象を読者に植え付けるような記事を書くのか。
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 もう一点、気になることがあった。仙台まではいったいどうやって来たのだろうということである。

 これはまあ、記事で触れる必要はないのかもしれないが、何も考えずに素直に記事を読むと、ふつうの人はアメリカから羽田へ直接飛んできたと思うのではないだろうか。
 少なくとも、そう誤解されても仕方ないような記事になっている。

 「初飛来」というからには、分解して船で運んできたのではないだろうが、最大7人乗りだという小型ジェット機が、はるばるアメリカから太平洋を越えて渡って来られるわけがない。
 西海岸を出発したとすれば、途中ハワイに降りるとしても、ぜんぜん無理だろうと思う。

 調べてみると、ホンダジェットの航続距離は2185km(honda.co.jp)に過ぎず、たとえばサンフランシスコからホノルルまでの半分ほどしか飛べない。

 実際には、アラスカのノームから、ロシアのアナディル・マガダン・ペトロパブロフスク-カムチャツキー・ユジノ-サハリンスクの各地、さらに仙台を経由して東京羽田に来ている(flightradar24.com)。

 アラスカまでどうやって行ったのかはわからなかったが、途中、7回以上は着陸して、カムチャツカ半島とサハリン経由でようやく日本にたどり着いたのである。
 「よしよし、よくがんばったなあ」と翼をなでなでしてあげたくなるくらいの長旅だ。

 航続距離の短さ(それでもこのサイズとしては立派なものだが)には一切触れないで、「完成したホンダジェットは海外メーカー製より最高速度は1割速く、2千フィート(約600メートル)高く飛べる。室内は2割広く、燃費は17%いい」などと、「海外」と比較した自賛記事に徹している。
 パイロットへの言及もないところを見ると、おそらく日本人ではないのだろう。

 「自画自賛は危うい」と常に警鐘を鳴らしている新聞とは思えない。
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 朝日をあげつらってみたが、他はどうだろう。ネットの記事を見てみると、

「ホンダが米国でつくった小型ジェット機「ホンダジェット」が初めて日本に飛来し、23日午後、東京の羽田空港に到着した」(asahi.com(新聞と同じ))
「ホンダのビジネスジェット機「ホンダジェット」が23日、日本で初披露された」(mainichi.jp)
「ホンダが開発した小型ビジネスジェット機「ホンダジェット」が23日、拠点の米国から羽田空港に到着し、報道陣向けに公開された」(yomiuri.co.jp)
「ホンダが発売を予定している小型ビジネスジェット機「ホンダジェット」が23日、初めて羽田空港に着陸し、報道陣にお披露目された。」(sankei.com)

 うわっ。朝日が一番ひどいじゃないか。

 他のトピックに関して、こういう報道姿勢(印象操作?)を「体質」としてネットで叩かれているのを見るにつけ、同情的に眺めていたのだが、こんなことでは、批判されても仕方ないような気もしてくる。

 しっかりしてくれ。

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2015.03.28

●今回は「想定外」かもしれないが・・・

 旅行中でほとんど報道に接していなかったし、帰ってからもテレビは一切見ていないのだが、ジャーマンウィングズ機(エアバスA320型)がフランスアルプスに墜落したニュースはネットで知り、帰宅後新聞は読んだ。

 原因がわかった上で時系列に記事を読んでいくという倒叙推理のような珍しい読み方になり、ボイスレコーダーが解析されるまでの推測はことごとく外れているのを興味深く辿ることになった。

 だが、まさかこんな原因だとは、予測せよという方が無理だから、そこはまあ、嫌いな言葉だけれど、「想定外」としても仕方ないかもしれない。

 しかしながら、当然「想定内」としておかねばならない陥穽がそこに潜んでいることに自覚的ではない国や航空会社があることには落胆した。

 アメリカでは、航空機の種類によってはコックピットに常時2名以上の乗務員がいなければならないことを連邦法で定めている。
 なのに、ドイツもスペインも、それにオーストリアもノルウェーも、アイスランドも日本も!、その規則を定めていなかったというのだ(『朝日新聞』)。
 そのうち、ドイツとオーストリアでは、今回の事件を受けて常時2人制を導入することに決めたという。対応が素早いのはさすがだ。

 面白いのは、何かと話題のスカイマーク(日本の格安航空会社)が「以前から「常時2人」態勢をとっている」(同)ということだ。偉いぞ。

 日本航空は、「対策が必要かどうかは今後判断する」(同)と悠長なことを言っている。統合失調症を患っていた機長が羽田沖に飛行機を墜落させた経験(1982年)を持つ航空会社の対応だとはとても思えない。
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 いや、ただ、私が上記で「「想定内」としておかねばならない」といったのは、機長や副操縦士が精神的問題を抱えていて機を墜落させる可能性のことではない。
 それも考えなければならないのかもしれないが、それよりはむしろ、操縦士がコックピットに一人になったときに、失神したり死亡したりする可能性のことだ。

 報道されているとおり、2001年9月11日の同時多発テロを受けて、コックピットへの立ち入りが厳しく制限されるとともに、テロリストが客室からコックピットへ入ろうとしても入れないような対策が施された。
 現在のドアは銃弾すら通さないというし、今回の悲劇的事件が実際にそうであったように、機長でさえ外からドアを開ける手段を持たない。

 だとすると、別に自殺願望や悪意がなくても、一人操縦室に残った操縦士が何らかの事情で失神したり死亡したりすれば、飛行機は墜落する以外に道がなくなってしまう。
 「客室乗務員が2人目としてコックピットにいても、できることは限られている」というようなバカなことを言う「専門家」もいたようだが、コックピットのドアを開けることさえできれば(スイッチを捻るだけだ)、最悪の事態は容易に回避されるのである。

 一方の操縦士がトイレに立った間に、残った操縦士が失神したり死亡したりする可能性はあるか?
 限りなく低いだろう。
 しかしながら、毎日毎日何万機という飛行機が世界中の空を飛んでいるのが日常なのだから、いつか必ず、どこかでは起こる。
 その時に、ドアが外から開かなければ、墜落は免れない。その結果は、数十人から数百人の死であり、地上に人的被害が出る可能性もある。

 そんな悲劇を回避するためには、客室乗務員を1人、トイレに行った操縦士の代わりに待機させておくだけでいい。仕事は、万一の時にコックピットのドアを開けることだけだ。何も難しいことはない。

 そんな重要かつ単純なことが法制化・規則化されていない国や航空会社があるなんて、にわかには信じられない。まして、「対策が必要かどうかは今後判断する」(日本航空)とか「今後の対応も決まっていない」(バニラエア)とか・・・
 どうして今までに想定して判断していなかったのだろうか。

 「想定外」という言葉は、ほんとうにもう聞き飽きた。

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