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2005.04.21

★追悼:ロック岩崎

 車の中でラジオをつけると、1時のニュースが終わるところだった。トップニュースの繰り返しのような感じで、兵庫県北部の但馬空港でアクロバット飛行を練習中の飛行機が墜落し、操縦士が重体だと言っていた。

 飛行機乗りの端くれとして、ある種の感慨はあった。でもそれだけ。エアロバティックに事故はつきものでもある。

 久しぶりにいつものトラットリアで前菜を食べるころには、そのニュースを忘れていた。今日のココログにエントリする記事の題名も決めた。「前菜春色」だ・・・

 仕事帰りの車の中で聞いたニュースでは、もう墜落のことには触れていなかった。続報が気になったが、そんなに一般の人の気を引く大きなニュースでもない。

 が、家に帰って何気なくasahi.comを開くと、いきなり墜落したピッツの写真が飛び込んできた。白と赤が目も綾な複葉機。格納庫で、滑走路で、空で、見慣れた機体だ。携帯用の航空無線機にサインしてもらったときにあった、「空へ!!」の文字もある。機番も JA22AR。間違えようもない。まさか、重体の操縦士って・・・

 違う人が操縦していたかも、と思いながら記事を読むと、重体だった岩崎貴弘氏、通称ロック岩崎は、すでに帰らぬ人となっていた。

 氏の飛行を初めて目の当たりにした日のことを思い出す。やはり但馬空港でのことだ。

 イベントのために張られた大型のテントが飛ばされそうな風の中、ロック岩崎の操縦するピッツは、あくまで水平に、あくまで垂直に、まるで風など関係ないかのごとく、神業のような飛行を続けていた。くるくるくるくると落下してきても、風に流されている様子はない。上空に風はないのか? と錯覚させるほどの飛行だ。
 だがもちろん違った。上昇して機を完全失速させ、飛行機を空中で「ただそこにある物体」とする演技の時には、ピッツは大きく風に流されるのだ。

 地上での実況は、娘さんがやっている。上空で僚機に指示を出すロックの声は、無線機から聞こえてくる。2機のフォーメーション飛行も、ソロのアクロバットも、それはそれは見事というほかなく、自分と同じ人間があの飛行機を飛ばしているとはとても信じられなかった。

 演技の合間、地上で見たロックは、小柄な気のいいおじさんだった。もちろん、精悍な顔と体も印象に残っている。
 彼が「さあ、そろそろもう1回上がろうか」と言う前だったか後だったか、周りにファンが誰もいなかったので、おそるおそる、無線機へのサインを頼んだ。
 「すみません、これからまた上がりますんで」と言われた。がっかりすると同時に、そう言っている間にサインぐらいできるだろう、という気持ちがかすめたのも事実だ。だが、たぶん、ぼくの顔は悲しげなものになっていたと記憶する。一瞬の後、彼は無線機にサインしてくれ、例の「空へ!!」を勢いよく添えてくれた。もう掠れて見えなくなってしまった今でも、あの筆跡は鮮明に目蓋に焼き付いている。
 誰か一人にサインすれば、それを見つけたファンの行列ができるかもしれないことを気になさっていただろうことは、後ですぐに気づいた。幸い、そういうことにはならなくてほっとした。
             ・・・
 岩崎氏は、世界最強の戦闘機と言われた F15 の元パイロットだ。

 同じ日に別の機体でアクロバット飛行を見せてくれたジャンボジェットの元機長も、その後、私が飛行訓練をしていた日に、海に墜落して帰らぬ人となった。やはり練習中のことである。
 まだ一人で管制圏も出してもらえなかったころ、ちょうど管制圏の端で引き返そうとしていたときに、捜索のための無線が入った。何度かの管制塔からの呼びかけに、もちろん、答える人はいなかった。そのときには、まさか海に墜ちているなんて思わなかったのだが。

 あの夏の日、但馬で華麗な飛行を披露してくれたパイロットが2人も亡くなった。

 追悼・・・と言うしかない。

 同時に、「ぼくはアクロバットはやりません」とだけ言って、その理由は語らなかった恩師のことを思い出す。
 先生のお気持ちはわかりませんが、とにかくわたしもそうします。もちろん、ロック岩崎氏への敬愛の念は、いささかも減ずるものではないけれど。

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