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2007.08.22

★現場と事実と報道と

 一昨日、那覇空港で中華航空機が炎上した。

 乗客乗員全員が無事で、小さな消火器で勇敢に炎に立ち向かった整備士も軽傷ですんだことは、何よりも喜ばしい。

 だから言えるのだが、非常におもしろいことが3つあった。

 一つは、「乗員4名が取り残されている」だの、「救助された乗員が救急車で病院へ運ばれた。ケガの程度はわかっていない」だのという誤報が相次いだこと。
 どうすれば、そういう「なかった事実」が報道されることになってしまうのだろう。

 二つ目は、現場の那覇空港にいた人たちが「ロビーのテレビの前などに集まって固唾をのんで状況を見守っています」などといった報道があったこと。

 これはただ単にテレビの方が飛行機がよく見えるからではない。やや比喩的に言えば、今、すぐそこで爆発炎上している飛行機が、ほんとうに実在することを信じるためには、テレビで報道されているのを確認する必要があるのだ。私たちはそういう世界に生きている。

 もう一つ、お昼の番組で、現地で取材している記者がきちんとした取材を元に正しい情報を送ってきたにもかかわらず、機体の左側、第一エンジンの方が激しく燃えている映像を前に、東京のスタジオにいる司会者が勝手に事実を変えてしまったこと。

 記者は、右側の第二エンジンから燃料が漏れて燃え始めたと言った。しかしながら、それはその時画面に映っていた状況とは合致していなかった。後知恵で言えば、その時右側の火勢はすでにおさまっており、左側の第一エンジンに燃え広がっていたのだ。

 が、司会者は、「さっき右側と言ったのは、操縦席から振り返って見たときに右側、つまり、左側のエンジンが燃え始めたということですね」と、事実を目の前の映像に合わせてしまった。もちろん、「第二エンジン」という言葉も無視して、である。

 それにしても「操縦席から振り返って見たときに右側」とは苦しいこじつけである。飛行機(車だって同じだ)の右左をいうときに、誰がそんな基準を立てるだろう。

 だが、そうまでしても燃えたのは左側にしたいほど、確かに映像では右側は燃えていないように見えた。私自身、「右側の第二エンジンから燃料が漏れて燃え始めた」と聞いたときは、「左側の第一エンジンの間違いなのではないのか」と疑問に思った。

 こうして、自分の見ているものに符合するように、われわれは手に入れた情報を勝手に組み替える。必ずしも、「百聞は一見に如かず」とは言えないのだ。

 夜のニュースだけご覧になった方は、以上が何を言っているのかおわかりにならないかもしれない。例えば報道ステーションでは、先に右側のエンジンが燃えている映像が繰り返し流れていた。視聴者が撮影した、消防車が到着する前の映像だからである。

 あれだけをご覧になっていたら、「左側から燃え始めたと信じ込む」などということが起こるなんて想像できないかもしれない。
 だが、お昼のニュースの時点では、おそらくほとんどの人が「右側は燃えておらず、左側だけ燃えている」と捉えていたのではなかろうか。

 現場の事実は東京へ送られて変更され、その変更された事実を現場にいる人たちが受け取る。もしかすると、報道から受け取ったその「事実」は、「現場の声」として再生産される可能性すらある。

 事実の認定、そしてその解釈には、いくら謙虚であってもありすぎることはない。

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