●悲しき春告鳥
ハンセン病の元患者数百人が暮らしている瀬戸内の島を案内してもらっているとき、ウグイスのさえずりを何度も聞いた。
今年初めてである。
特に、日没に向かうころにはひっきりなしに鳴いていた。あれは時間の関係なのだろうか、それとも、生息域の問題かな?
もちろん偶然なのだが、ちょうど水子地蔵(強制堕胎が行われていた)や納骨堂(遺骨の引き取り手もなく偽名のまま納骨されていることも多い)、監房跡(院長の権限で独房などに拘束できた)や収容所跡(新着患者をここで「消毒」「選別」した)、そして、患者収容桟橋跡(夕日がみごとだった)などを歩いていたときだ。
「これからは、ウグイスのさえずりを聞くたびに、今日のこの見学と、「強制収容所」へ連れてこられた人たちのことを思うことになるんだろうな」と考えながら歩いていた。
香りや日射しなんかと違い、春告鳥の声は記憶のトリガーにはならないかもしれない。
現に今、頭の中でホーホケキョと呟いてみても、つい数日前の記憶が vivid には甦ってこない。
だが、本物のさえずりを聞いた時にはまた違う可能性もある。
いずれにせよ、「忘れない」ことが、私でもできる最低限の行為である。たとえ、春告鳥のさえずりが悲しく聞こえるようになってしまうとしても。
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