3月のアニバーサリーに何もできなかったのだが、ちょっと落ち着いてきたのでフレンチでも食べようということになった。
昼食で何度か使ったことのある、ヨーロッパのしゃれた一軒屋風のレストランに電話。
昼の11時ごろだったのだが、電話に出ないという。
「また、つぶれてるんじゃない?」と家人。
まさか、あそこはつぶれたりしない。営業時間になるまで電話に出ないとか、そういうことなんじゃないだろうか。
とかいいながらネットで調べると、「ただいま休業中です」とのこと。
うーん、しかし。
オーナーシェフの挨拶を読んでも、納得できない。第一、たくさんいた従業員は全員解雇か?
無責任な客から見ると、店を閉める理由なんて何もないと思うんだけど、どうしたんだろう。
わざわざ建てたというあのプチ・シャトーのような建物はどうなるのか。
家人は1度しか行ったことがないというのだが、私は数回ある。
いい雰囲気の広い空間で食事ができるのに、ランチに関していえば高くなく(今見ると少し値上がりしていたが)、ちょっと人を誘ったりするのにちょうどいいのだ。
あそこを失うと、この辺で代わる場所はないという気がする。残念だ。
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残念がっていても仕方がないので、前からちょっと気になっていた店に予約を取って出かける。
店よりも料理よりも、下品な客で印象に残る夜となった。
その客は、最初カウンターに座っていたのだが、姿形は見えなかった。けれでも、とにかく声が大きくて下品なので、どんな「オバハン」なのだろうと思っていた。
ところが、料理がメインにかかるころ、隣のテーブルが空いて、そこへ移動してきた。
声の主は、綺麗に着飾った、30前と思しき「女の子」と言ってもいいような人だったので驚いた。
さっきにもまして話が良く聞こえる。いや、聞こえるなんてものではない。自分たちの家族同士の会話より、よほど耳に飛び込んでくる。
ワインが相当入っているという事情もあるにせよ、相変わらず下品だ。
声だって、ヒキガエルを轢き殺したような感じなのだが、職業は声楽家らしい。「先生」と呼ばれてもいる。
こんなに着飾ったワイン通の若い「声楽家」が、同時にこれほど下品でエラソーでもあることができるという事実に、ちょっとくらくらした。
「チーズがないのがこの店の唯一の欠点や」という発言や、シェフに注文をつけたりする様子を見ていると、どう見ても常連らしいのだが、会話の中でソムリエールが「お目にかかるのは初めてですね。お噂はかねがね・・・」というと、「どんな噂やねん?」と返している。
さて、この問いにどう返事するのかと固唾をのんで見守っていると、さすが客商売、すかさず、
「ワインのお好きなとっても楽しい方だと伺っております」
参りました。
息子が後で、「酒癖の悪い、めっちゃうるさくて下品な人やという噂とか、ほんまのこと言うたらどうなってたんやろ?」というので、「修羅場やな」と答えておいた。
店でも料理でもなく、下品な常連の芸術家の記憶とともに覚えられるレストランも可哀想である。
もう1度ぐらいは出かけずばなるまい。
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