●ニュートラルには入らないのか?
トヨタ車の「暴走」が続いている。
3月8日午後、アメリカのカリフォルニア州サンディエゴの高速道路で、61歳の男性が「アクセルペダルを踏み込んだ際にペダルが戻らなくな」り、「ブレーキは利かず、エンジンを切ることもできずに時速90マイル(約145キロ)超で走り続けた」という(asahi.com)。
その後、「通報で駆けつけたパトカーがプリウスに並走し、警察官がパーキングブレーキをかけることなどを指示。時速50マイル(約80キロ)ほどまで減速したところでエンジンを切ることができ」た(同)というのだが、ドライバーは生きた心地がしなかっただろう。
パトカーが併走するまでにどれぐらいの時間がかかったのかは報じられていないが、それまで減速できずに時速90マイル超で走っていたというのがすごい。日本の高速道路でそれが可能だろうか?(あ、交通量が極端に少ない高速道路も多いなあ・・・)
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不思議なのは、どうしてギアをニュートラルに入れないのかということだ。
いくらエンジンが極限まで回ろうが、ブレーキが故障しようが、ギアをニュートラルに入れて動力の伝達を切ってしまえば、後は惰性で走るだけである。今回の場合、ブレーキは故障していたわけではないだろうから、簡単に止まれたはずだ(注:これは必ずしもそうではないようです。↓の「さらに後記」を参照)。
ドライバーがパニックになってそれを思いつかなかったのか、それとも電子制御の「仕様」なり「不具合」なりで、ギアがニュートラルに入らないのか。
自分の車で実験してみると、どんな状況でもギアはニュートラルに入れられるようだ(アクセル全開状態なんかにすると危ないので、それは試していない)。
ニュートラルに入らないのも含めて「仕様」か「不具合」だというのなら仕方がないが、今、トヨタなり日米当局なりマスコミなりが広報に努めなければならないのは、
「万一アクセルが戻らなかったりエンジンの回転が落ちなくなったりした時は、まず、すみやかにギアをニュートラルに入れてブレーキを踏んで下さい。それでもだめな場合は、キーをひねるかスイッチを長押しするかしてエンジンを切って下さい。その際、ハンドルロックを避けるため、キーは決して抜かないで下さい」
ということのはずである。
今回の事故で駆けつけたパトカーの警官にしても、真っ先に出すべき指示は「ギアをニュートラルに」だと思うのだが・・・
そうしていないところを見ると、やはり、エンジン回転数が一定以上の時はギアをニュートラルにできない「仕様」になっていたりするのだろうか。
ただ、2月24日の公聴会では、エンジンは暴走していてもギアをニュートラルに入れてブレーキを踏めば止まることはできたという証言も出ている。
いずれにせよ、レクサスやプリウスの暴走を報じる記事に、ギアをニュートラルにしたのかどうか、あるいはできなかったのかどうかについてまったく触れていないものが多いのは不思議で仕方がない。
・・・などと思っていると、またプリウスが暴走して事故を起こしたという記事を目にした。アメリカで連日ということになるらしい。
「私道から道路に出ようとしていた時に急加速し、交通量が比較的多い道路を横断、石壁に衝突して停止したもよう」(asahi.com)だという。
これだとギアをニュートラルに入れる余裕はなかったかもしれない。ただ、この例は、アクセルとブレーキの踏み間違いなどの可能性も高いのではないかと思う。
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後記:調べてみると、2月23日の公聴会で証言した女性によれば、ギアをニュートラルに入れてブレーキを踏んでもサイドブレーキをかけても減速しなかったそうですね・・・
何かの間違いではないかとも思うのですが、ギアの選択も電子的に制御されているとすると、レバー自体は動いてもギアはニュートラルにならないという可能性もあるのかもしれません。
さらに後記:さらに調べてみると
これまではNレンジにいれてブレーキ踏めばとまるじゃない、と思っていたのですが調べてみてと記したブログを見つけた。
・ブレーキブースターが作動しないため、ブレーキはほとんど効かない
・Nレンジには(おそらく)入らなかった=駆動力がカットできないため加速しつづける
ことが分かってきました。
一連の件で、何の知識も検証もなく、さらには間違った情報を元に無責任な言説を垂れ流すブログや掲示板があふれる中(私もそうならないように自戒しなければ・・・)、このような信憑性の高いブログがあることにはほっとする(広告が多いのは気になるけど)。
だが、どの世界でも?「悪貨は良貨を駆逐する」ことに暗澹たる気分になってしまう・・・
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コメント
どんなに自動車が、電子制御とか安全装置で進歩しても、100とか数百馬力の凶器を、たかだか30日程度の免許証で動かすのが、無理無体、めちゃくちゃな話です。(免許をもってしまうと、自動車の本質的欠陥構造を意識する人はごくまれでしょう。素人が数百馬力のマシンを操るのは無謀な話です)
これからのライセンスには、制御不能、ブレーキ壊滅状態での、運転技法も組み込めば、「もともと、不安定なシステムを、制御する無理をしている」ということに、利用者は気づくことでしょう。
トヨタ車は長年愛好していますが、安い車なので、それなりに全貌が分かっていて、危ないことはしません。それに満足しています。
しかしあらためて「車とはいつでも暴走するという覚悟」を新たにしました。
注
私の見立てでは、ほとんどの事故は、アクセルを床まで踏み続けたのだと想像しています。数パーセントの確率で、詐称もあるでしょう。
投稿: Mu | 2010.03.12 05:47
おじゃまします。
失礼ですが、こちらの知識では、
ブースター「真空倍力装置」は、エンジンが回っている限り、動作するものです。
吸気の負圧を利用しています。
仮に、エンジン停止しても、ブースターの作動が止まるだけで、油圧は作動します(重くなる)。
お邪魔しました。
投稿: 通りすがり | 2010.03.12 19:06
Mu様
今回ちょこちょこっと調べてみて、自分が乗っている車がどのように制御されているのか、わかったつもりでわからないことが多いことに改めて思い至りました。きちんと知っておきたいと思う反面、たぶん、ちゃんと知っている人は守秘義務とかで教えられないし、それ以外はだれに聞いてもよくわからないのではないかという気がしてきました。
通りすがり様
真空倍力装置については一応存じております。
紹介先のブログで述べられていることで私が意外に思ったのは「エンジン全開の時には、倍力装置の効きが非常に悪くなる」という点です。それは知りませんでした。エンジン全開でも真空倍力装置が正常に動作するということを理論的・実験的にご存知であれば、お教え下されば幸いです。
http://d.hatena.ne.jp/REV/20091002/p3" target = "blank" >こちらにもスロットルが開いていると負圧が発生しないということが書かれています。真偽のほどは存じません。
投稿: Wind Calm | 2010.03.12 19:36
冒頭の例は、不思議がるまでもなく、狂言の可能性が出てきたようですね・・・(asahi.com)
投稿: Wind Calm | 2010.03.16 22:19
レクサス、プリウスなどのECBシステム(ElectricalControlBrake)を用いている車種はエンジン吸気の負圧を必要としません。なぜなら、あれらのシステムはあらかじめ蓄圧したタンクから圧力を得て各車輪のブレーキシリンダーを加圧しているからです。
(圧が規定以下になると加圧ポンプが連続稼動して蓄圧し続けるので圧力不足になることはありません)
投稿: 匿名 | 2010.05.06 20:34
ご教示ありがとうございます。
であれば、ブレーキは十分効くわけですね。最初?に話題になったアメリカの高速道路隊員のレクサス事故の時は、やはり駆動力が制動力を上回っていたのでしょうか・・・
いずれにせよ、ご教示いただいたような情報がもっとひろく報道されるべきですね。
投稿: Wind Calm | 2010.05.09 23:38