★思想調査
家人が新しい健康保険証をもらってきた。今回からクレジットカードみたいなのになっていて、新鮮である。
それとは別に、裏を見てびっくりした。脳死で臓器提供するか、心臓死で臓器提供するか、それともしないか、する場合は、したくない臓器があれば丸をつける・・・みたいな意思表示をするための欄が3/4を占めている。
病気が治ることを前提に保険証を持って医者に行くのに、その保険証に若くして死ぬことが前提の文言が刻まれていることにまず驚く。
まあ、こういうのにつけておけば便利であることは理解はできるのだが・・・
問題は、病院にかかるたびに、たとえそれが風邪であっても、臓器提供する人なのか違うのか、それとも記入しない(あるいは悩んでいる)タイプの人なのか、カミングアウトさせられるということである。
そうならないようにという配慮のつもりなのだろう、その部分を隠せるシールが添付されていた。
しかし、シールを貼れば、「臓器提供の意思の有無を隠したい人」になってしまう。どうあがいても、「思想調査」を免れることはできない。
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家人が更新した免許証も今日郵送されてきた。その裏にも同じような欄があって、半分以上の面積を占めている。こちらにはシールすら添付されていない。
身分証明の代わりに使う書類で、なんで臓器提供の意思の有無を他人や警官に知らせなければならないのか。
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「記入は自由です」とある。当たり前だ。
だが、こういう欄がある限り、どういう対応を取ろうとも、ある考え方や立場を表明してしまうことになる。
この種の書類にこういう欄を設けることの是非が、果たして真剣に議論されたのだろうか。
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臓器移植について心から真剣には考えたことがない。しかし、いくら真剣に考えても、脳死や心臓死の家族を前にしたときどう考えるかは、その時になってみないと決してわからないだろう。
ところが、こういう書式を空白にしておくことは、常にその判断を迫られているようなストレスを生む。
かといって、「臓器提供しない」にマルをすると何だか申し訳ないみたいだし、今「する」と決断することもできない。
私はそういうタイプの人間だし、実際、そんな人も多いのではないだろうか。
たとえば鬱病の人なんかがこういう意思表示を迫られたら(現に今日もどこかで多くの人が迫られているはずだ)、確実に病状が悪化すると思う。
私だって、今後保険証や免許証を使ったり意識したりするたびに、寿命が少しずつ縮まりそうである。
こんなカードを作って人に踏み絵を踏ませることはやめるべきだ。たとえ臓器移植を推進するのに大賛成であったとしても。
私はセンシティブになりすぎているのだろうか・・・
《後記》
書いたつもりで書いていなかった。きちんとした説明もなしにこういうことを推進するとどうなるか。
たとえば・・・
あなたは思い切って、「臓器提供しない」にマルをした。何だか申し訳ないが、たとえ脳死後であれ心臓死後であれ、体を切り刻まれるのが嫌だという思いは譲れなかった。
ところが、何年か経って、家族で旅行をしていたとき、交通事故に遭ってしまった。幸い、妻/夫(以下、伴侶)は助かったが、あなたは脳死状態になり、娘/息子(以下、子ども)は肝臓にひどい損傷を受けてしまった。
伴侶は当然、子どもが助かるなら、脳死のあなたから肝臓を取り出して移植してもらいたいと思った。悲しいことだけれど、そうすれば、愛するあなたは愛する子どもを助けるばかりか、その子の中で生き続けることができる・・・
あなただってもちろん、自分が判断できる状態であれば、絶対にそれを望んだ。
しかし、あなたには自分の意思を表示する術はない。
いや、あなたの意思はすでに免許証の裏によって表示されている。「臓器提供しない」と。それは、救急隊員によっても警察官によっても病院関係者によっても確認されている。この本人の意思を覆す術はない・・・
あなたや私と、その家族の身にはこんなことは起こらないだろう。だが、日本にはまだ1億3千万人の人がいるのである。誰かの身にはおそらくこんな悲劇が起こる。そして問題は、そこまで考えて臓器提供意思を記入する人がいるのだろうかということだ。
「記入欄ができたから家族と話し合って書きました」なんて簡単にことが運ぶほど単純な話ではないのである。
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