■母たちの村
女子割礼、最近では女性器切除や FGM(Female Genital Mutilation)などと呼ばれるようになった古い慣習は、アフリカ大陸の赤道沿いを中心に今でも広く分布している。
出血や感染症による疾病や死亡、施術時の苦痛、施術後の障害など、非常に問題の多いその行為はしかし、文化や伝統や宗教の名を借りて、長い間続けられてきている。
近年では、国連がこの慣習の根絶を目指して努力していることも知られてきた。
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映画は、自らも FGM で苦しめられ、娘たちをも失った母の思いと行為を描く。
「悪しき」伝統と闘う術は、「庇護を求めてきた者は何としても守らねばならない」という「善き」掟である。
FGM から逃げてきた4人の子どもを掟どおりに庇護することで、別の掟である悪しき伝統を打ち破ろうとするのだ。
この庇護を表す「モーラーデ」という言葉が映画の原題になっている。
半ば命がけとも言えるモーラーデの決行が、徐々に村の女たちを、そして限られた男たちをも変えていく・・・
悪弊を打破するためには、こうして当事者が闘うに如くはないだろう。茨の道と呼んでも生ぬるいほどの困難なことではあるのだが。
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フランスとの合作ということだが、南アフリカを除いて、アフリカ(だけ)を正面から描いた映画を見るのは初めてかもしれない。
登場するのはあくまで土着の人々である。
彼らの文化や習慣、不思議なコミュニケーションの作法など、説明なしに次々に描かれる様子は、繰り返されるにつれてその世界が何となく了解されるように構成されている。
もちろん、解説してもらえればより理解は進むのだろうが、無理にわからせずに謎を残すところがまたよい。
結局、「ほんとうに」わかることなどできないのだから。
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文化相対主義や多文化主義は FGM を認めていいのか。
FGM を「自己決定」した場合は?
「簡単に答えは出ない」などと言って逃げずに、ここはすっぱり、「認めるべきではない」と宣言したい。
(MOOLAADE, 2004 Senegal, France)
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