今年度から、というわけでもないのだが、家人に付きあって夜のウォーキングを始めた。
ふたりとも運動不足がひどくて、太っていないのに血液検査の数値が高い(何の?)。
息子が塾に通っていた1年間だけ、塾のある日に歩いていたのを覚えているので、4年間のブランクがある。
都合でできない日もあるし、この際心を入れ替えて、通勤の際にもなるべく歩いたりしている(いつまで続くかわからないけど)。
ただ、遠い方の職場へ行く日は車なので、なかなか歩くというわけにもいかない。
徒歩と電車でも通えるのだが、時間もかかるし利便性も格段に落ちる。車をやめるという選択肢は今のところない。
そこで、職場から最寄り駅まで歩いて昼食を食べにいくことにした。また職場に戻ることになるので、いちおう往復歩ける。
桜は散ったが気候はいい。1週間前に同じことをやれば満開の桜だったと思うのだが、後の祭りである。
ともかく・・・
駅近くを歩いていると、路地裏の小さな家の前に、譜面台に楽譜を広げたようなメニューが置いてあった。
メニューがあるからには店だとは思うのだが、ためつすがめつ眺めても看板らしきものが見当たらない。隣との間に隙間もなければ家の前に庭もない、いきなり外壁で入り口の、間口の狭い家である。玄関?の横には自転車が置いてある。
なんとなく風の噂で聞いたことのある(というよりインターネットで見たことのある)洋食屋ではないかと思うのだが、入る勇気がない。
玄関前でメニューを眺めていると、「ごちそうさま」といって客らしき人が出てきた。
やはり洋食屋なのだ。
しばらく考え、意を決して入ろうとすると、また客が出てきた。入れ違いに入る。
店内はカウンターのみ。ややくたびれた、どちらかというとちょっと小汚い感じが拭えない店である。ご夫婦と思しきお二人の対応も、ホスピタリティにあふれているとは言いがたい。
ちょっと失敗したかなと思いつつ、スパゲティを注文する。奥さん?は、ちょっと驚いたような表情をした後、申し訳なさそうに「かなーりお時間がかかりますけど、よろしいですか」とおっしゃる。
ただならぬ時間の長さを予想した私は「どれぐらいですか」と聞く。「20分、いや、30分ぐらい・・・」
確かに、「混雑時にはスパゲティの注文をお断りする場合があります」とメニューに書かれていた。でも、断りたいという感じでもなかったし、乗りかかった船だったので「そちらがよろしければ、それでお願いします」と注文してしまった。
微妙な空気が流れ、何だか申し訳ない気分になる。
他の客はほとんど日替わり定食を食べているようだ。
だがまあ、注文を受けたご主人?は、眉ひとつ動かすことなく淡々としている。
私のためだけに湯を沸かし、フライパンにオリーブオイルとニンニクを入れ、アンチョビを刻んでツナ缶を開ける。
それなりに待たされたが、パスタが鍋に入ってしまえば10分以内に料理が出てくることは確実だ。計ってみると茹で時間は5分だったが、ご主人はタイマーや時計を使わず、ときどき茹で具合を確認しつつ茹で上げた。
長くなるので結論を書こう。
スパゲティはとてもおいしかった。いろんな店で食べているが、たぶん1,2を争うのではないかと思う。
日替わり定食やハヤシライスやオムライスやハンバーグやカレーがメニューに並ぶ洋食屋の出すスパゲティとはとても思えない。その辺の専門店より確実においしい。
一緒に出されたフランスパンは一部が焦げていて、ちょっとどうかと思うものの、このパスタが食べられるなら、たぶんまた来るだろうと思った。
店の人の愛想も特に悪いわけではない。客のほとんどは常連のようだが、話しかけられると、静かにぼそぼそという感じで会話している。楽しそうには見えないが、嫌々しゃべっている感じでもない。そういう人柄なのだろう。
こんな店に看板がないなんて・・・ もしかしたら「名もなき店」を気取っているのだろうか?
店を出てから改めて看板を探すと、15センチ四方ぐらいの赤茶色(訂正:緑色)の石に彫られた店名を知ることができた。右下に小さく彫ってあるだけなので、近づかないと読めない。看板というよりは表札である。
やはりというか、ネットで風の噂を聞いていた、あの洋食屋らしい。帰宅して調べると、ほとんど「絶賛」されている。
あんな店が、あんなところに埋もれているとは・・・
ハヤシライス・オムライス・ハンバーグ・エビフライ・カレー・・・みたいなメニューなのだが、どれもあのパスタのようにおいしいのだろうか。
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