■出会いと別れ
先日、60km/h くらいで快調に車を走らせていると、インパネに突然バッテリのマークが赤く点灯すると同時に、ステアリングに違和感を覚えた。
「遊び」の部分を過ぎてさらに切ろうとすると、それ以上動かないような感触がある。
それでも、ステアリングを左右に振ってやると、針路は一応変更できそうではあった。
3車線の一番内側を走っていたので、「どうしようかなあ」と考えながら、ハザードライトをつけて徐々にスピードを落としつつ、同じ車線をなるべくまっすぐ走る。次の信号が赤になったのでふつうに停止でき、ちょっとほっとした。
ステアリング以外はまったく正常のようだ。
信号が青になる。
こんなところに止まっていても邪魔なので、ハザードをつけたままゆるゆると前進した。
インパネの情報からするとバッテリーに異常があるのだろうが、半年前に新品にしたばかりだし、ハザードもふつうに点灯している。エンジンもブレーキも正常。変なのはステアリングだけだ。
ともかく邪魔にならないところまで移動してから停止して、ディーラーに電話しようと考えた。止まれる場所に入るのにステアリングを切らなければならなかったのだが、これが岩のように重い。重いというより固いといった方が適切なくらいだ。
徐行していたから幸いそういうことにはならなかったが、ふつうに曲がろうとしていたら間違いなく曲がりきれずに壁にぶつかっていただろう。
ディーラーに電話すると、「ベルトが切れたためにダイナモの発電もパワステへの油圧供給も止まったのではないか」という話だった。なるほど、それで「バッテリーに充電できていません」という意味でマークが出たのだ。
だが、パワステ異常を知らせるウォーニングはなし。想定外ということなのだろうか。
ステアリングが重いことと、バッテリーに充電されていないこと以外に問題はないことを確認し、そのままディーラーへ向かった。わりと近所なのである。
しかし、「止まると余計に重くなりますよ」という言葉通り、再び走り出すためにステアリングを切るのがけっこう大変だった。走り出してしまえばまあ、「なあに、昔の車にはパワーステアリングなんてついていなかったのだ」などと強がることもできる・・・かと思ったが、明らかにそのレベルを超えていた。
ひたすら安全運転でディーラーにたどり着く。
その2週間ほど前だったか、ベルト周りから異音がするので見てくれとディーラーに行ったばかりだった。私はちゃんと、異常を事前に察知していたのだ。
だが、ディーラーでは異音が再現せず、そのままになっていた。
ちょっとバラして見てもらえばよかったと思ったし、ディーラーも客の申告をもう少し真剣に受け止めてもよかったはずだ。そうしていればこんな故障は起こらなかったのに・・・という考えもよぎったが、何も言わなかった。
結局、ベルトは正常だったのだが、テンショナーが外れて、なくなってしまっているということだった。ちょっと考えたものの、修理費が案外安かったので直してもらうことにした。
___
長くなったので、一足飛びに結論?を書こうと思う。
それからわずか9日、車が修理されてからだと6日。思いがけず・・・というわけでもないのだが、新しい車を買ってしまった。
これまでも2回走行不能になった車(1回目はここ、2回目はここ)だが、止まる分にはまあ危なくはない。
しかし、今回の故障が交差点やカーブで起こっていたら、高い確率で事故になっていただろうと思う。山や海沿いのワインディングなんかを走っていたら、曲がれずに谷底や崖下へ落ちた可能性も空想次元ではない。
そんなことで大怪我をしたり死んだりしたらたまったものじゃない。
それだけでなく、「死人に口なし」になってから、無能な警察に「ハンドル操作の誤り」などと認定されたらさらに浮かばれない。
いや、たとえ有能な警察でも、ぐちゃぐちゃに壊れた車を詳細に分析して「パワーステアリングの故障による事故」などと解明してくれる可能性はほぼゼロであろう。
外観は新車同然なのだが、何しろ車齢13年半。走行13万3千km。地球を3周以上しているのだ。
20年、20万kmを目指そうかという気もしていたが、そろそろ潮時か・・・
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そんな私の気持ちも知らずに、(たぶん)インド洋上を日本に向かっていた一台の車が、書類にサインした瞬間に私のものになった。これから2週間ほどかけて、少しずつ私に近づいてくる。
そう思うと、なんだかちょっといじらしいような気がした。大切に乗ってやろうと思う。
そして・・・
今でもそのデザインや走りに惚れ込んでいる愛車とは別れねばならない。幼いころからのアニミズムがこの年になっても抜けきれない私としては、相当につらい。
だがまあ、所詮、モノはモノだ・・・
新しい車はダウンサイジング、ダウングレード。
時代の空気か、人生への諦観か。
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