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2015.02.05

◆なぜ墜落したのか

 着陸はともかく、離陸が難しいと思ったことはない。

 初めて飛行機を操縦して離陸させるときですら、例外ではなかった。

 フルスロットルにして、滑走路の中心線に沿って加速していく。とにかくまっすぐ進めばいいだけだ。そして、速度が55ノット(約100km/h:もちろん機種などによって異なる)になったところでゆっくりと操縦桿を引けば、機はふわりと浮き上がり、速度を上げながら上昇していく。

 機首を上げすぎないように注意はするものの、難しいことは何もない。

 もちろん、技量に差はある。
 特に、離陸してから滑走路中心線の延長上をまっすぐ飛んでいけるかというと、それは難しい。私などはしょっちゅう、「後ろを見てください。まっすぐに上がってますか?」と聞かれ、そのたびに風に流されているのを自覚させられた。
 そう言われるまで気づかない進路のズレを、教官はとうに知っているのだ。

 だがまあ、少々ずれていようがどうしようが何の問題もない(すみません、先生)。
 とにかく、前後左右、それに上下にも、障害物は何もないのだ。機首を上げすぎて失速(揚力を失って飛べなくなること)しないようにさえ気をつけていればいいし、気をつけるまでもなく、そんなに機首上げをしてしまうことはありえない。

 それでも、免許を取得するまでは、繰り返し繰り返し、離陸失速からのリカバリー訓練をやらされる。
 訓練では、ひたすら機首を上げ続けて、「こんな鯉の滝登りみたいな・・・」というような状態にすることで無理矢理失速させ、そこから機首を落としてリカバリー操作に入るのだが、通常の離陸でそんな極端な機首上げを行うことは考えられない。

 実際の離陸中に万一失速しそうになったとしても、機を水平に戻す程度でそのまま飛行を続ければ何の問題もないはずだ。
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 以上はもちろん、機体が正常な場合である。

 昨日台湾で墜落したトランスアジア航空の飛行機には、もちろん、何らかの異常があったに違いない。
 しかしながら、ともかく離陸して飛んでいる以上、たとえば片方のエンジンが完全に止まっても、そのまましばらく水平飛行を続けることは何も難しくない(ように設計されている)。上昇能力は落ちるが、高度を上げることも可能だ。

 そして、外的要因ではなく、エンジンが2つとも同時に故障で停止するというのは天文学的な確率になり、通常は「ありえない」とされている。
 「ハドソン川の奇跡」の時は、ジェットエンジンに鳥が吸い込まれたことが原因で双方のエンジンがアウトになったが、今回の機体はプロペラ機である。

 また、映像を見ると、高速道路と交差しつつ主翼が車とぶつかった時点では、ほとんど90度バンクしている。たとえエンジンが両方だめになっていたとしても、滑空比の高い機体だから、しばらくはグライダーのように飛べるわけで、あんな姿勢になることもありえない。
 現場の状況がよく分からないのだが、もしかすると、わざと川に落として被害を最小限に食い止めるために無理な操縦をしたのかもしれないけれど。

 あるいは、エンジンも操舵系統も両方ダメになっていたのだろうか。それこそ天文学的確率だが、そうでも考えないと、あんなことが起こるとは到底信じられない。
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 乗員乗客の多くが帰らぬ人となった。深く哀悼の意を表するとともに、怪我をされた方々の一日も早い回復を祈る。

 残念ながら、事故原因について語ることができる機長も副操縦士も亡くなっているが、同様の事故が起こる確率を少しでも減らせるよう、このありえないような事故の原因究明を進めてほしい。

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コメント

こんばんは!
またかと言いたくなるトランスアジア航空235便墜落事故、妙に事故が続きますね。
また、台湾に行きたいと思っていた矢先だったので、妙にショックです。
どうも、間違って故障していない左エンジンを止めてしまった、という話ですが、そういう間違いこそ防げるようなシステムが必要なんじゃないでしょうかね。

投稿: iyota | 2015.02.07 21:20

 コメントありがとうございます。
 なるほど、そういうことだったんですか・・・ まだはっきりとはわかっていないのでしょうが、それならこの奇妙な事故の謎が解けますね。
 「そういう間違いこそ防げるようなシステム」、まったくおっしゃるとおりです。この事故を教訓にまた改善されるのだとは思いますが、事故が起こってから・・・なのは何ともやりきれませんね。

投稿: Wind Calm | 2015.02.07 23:44

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