◆愚かで危険な言葉遊び
学習指導要領の改訂案が発表された(2月14日)。
小5の社会では、竹島、北方領土、尖閣諸島が「我が国の固有の領土であることに触れること」と初めて明記。中学地理では竹島と尖閣諸島が日本固有の領土であり、尖閣については「領土問題は存在しないことも扱う」とした。(asahi.com)
どこがどこの領土かや、小中学生にそれを教え込むことの是非はこの際措く。
一番問題だと思うのは、中学地理で尖閣諸島について「領土問題は存在しないことも扱う」という点である。
どうして、たとえば北海道や本州や四国や九州について「領土問題は存在しないこと」を「扱」わないのだろうか。
それはもちろん、実際に(国家間の)領土問題が存在しないからである。
ではなぜことさら、領土問題が存在しないはずの尖閣諸島について、中学生に「領土問題は存在しない」と教えなければならないのか。
それはもちろん、実際には領土問題が存在するからである。
だからこそ、アメリカのマティス国防長官やトランプ大統領に「米国の日本防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条が沖縄県の尖閣諸島に適用される」などとわざわざ発言させ、それを聞いて大喜びしているのだ。
もしかすると、こういう論理的思考を養成しようという深謀遠慮でもあるのだろうか(ないよね)。
「日本政府は「領土問題は存在しない」と主張している」と教えるのなら問題ない。だがそれでは、政権の意向を体した学習指導要領にならないので、そうはなっていないだろう。
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間違いでも嘘でも事実に反していても、言葉遊びのように言い換えれば誤魔化せるとでも考えているかのような病が蔓延している。
最近では
「(南スーダンに派遣されている自衛隊の業務日誌には)一般的用語として “戦闘” という言葉が使われているが、法的な意味の戦闘行為ではない」(稲田朋美防衛大臣)
「事実行為としての殺傷行為はあったが、憲法9条上の問題になる言葉は使うべきではないことから、武力衝突という言葉を使っている」(同)
というような国会答弁が有名だが、日本の行政組織や立法組織はこれまでもずっとそうだった(司法すらそうだと聞く)。
他の国でどうだったのかは知らないが、近ごろは、post truth とか alternative truth とかいう言葉が世界を席巻している。
まさか、「優秀な」政治家や官僚を育てるために、小中学校から愚かで危険な言葉遊び(≒詭弁)を教え込もうとしているのではあるまい。
中学生ともなれば、「領土問題は存在しない」と教えられることの馬鹿らしさに気づく生徒も少なくはないだろう。そんな聡明な生徒たちが、そういう頭の悪い言葉の使い方をしないように導くことこそ、教育の使命である。
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