◆雪の牧ノ戸峠にて
雪景色で思い出した、昨年末の九州旅行。
阿蘇を後にして湯布院方面へ向かうべく、やまなみハイウェイを北上していた。日本で5本の指に入るくらいの絶景コースだ。
心配していた雪はもう大丈夫だろうかと思い始めたころ、最高標高地点の牧ノ戸峠(1333m)を前にして、圧雪路となった。
車はノーマルタイヤのFF(前輪駆動車)である。
いったん手前で止まったものの、「すぐ先が峠だし、ここまで雪がなかったんだから、目の前の圧雪路さえやり過ごしてしまえば、またすぐ雪はなくなるだろう」と考えた。
幸い交通量もごく少ない。
とりあえず様子を見ようと思って圧雪路に踏み込む。緩い上りだ。20〜30メートル走っていったん停止し、再度発進できるか試してみた。
無理。何度試みても空しく前輪が空転するばかりである。
とりあえず諦めて、雪のないところまでバックで戻る。上り坂なのでバックすることはできた。
うーん、どうしよう。いったん止まると身動きがとれなくなる。ただ、おそらくは、のろのろと進み続ければ行けないことはないだろう。
だが、峠を越えたところの下りはどの程度の勾配なのか。ここはやっぱり引き返すべきだろうなあ・・・ でも、ものすごく遠回りになるよなあ・・・
その時、対向車がやってきた。窓から手を出して振り、合図する。ゆっくり走っていたこともあって、気づいて止まってくれた。
互いに窓を開けて視線が合う。ちょっと違和感はあったが、話しかけてみた。
「あの、すみません、この先の雪はどんな感じですか」
相手はきょとんとしている。違和感が確信に変わった。ドライバーは外国人なのだ。おそらくは東南アジア系の。
たまたま止めた車を運転していたのが外国人・・・という時代になったのである。こんなことは初めてだ。
まあ、車を止めることもそうないんだけれど、ドライバーに日本語が通じないというのは予想しなかった。
相手から見れば、止めたのは日本人だと予想できたろう。よく止まってくれたものである。
気を取り直して、英語に切り替える。幸い通じた。
この先、雪はどんな感じか、それはどのくらい続くのか。
「うーん、2kmくらい」
えっ? 2km??
すぐそこが峠なので、せいぜい数百メートルだと思っていた。2kmはかなり厳しい。
逆に聞かれる。この先の道路に雪はないのか。うん、まったくない、安心していい。
そちらは大丈夫だが、こちらは行けるだろうか。うん、大丈夫だ、ゆっくりいけば(You can go slowly.)。
半信半疑だった。でも2kmだ。何とかなるかもしれない。
本当におそるおそる車を進め、結局は何とかなった(5kmくらいに感じたけど)。
___
しかしながら、逆の立場だったらどう答えただろう。
自分はスタッドレスタイヤを履いたレンタカーで峠をゆっくり越えてきた。その雪道を走れるかと聞く人がいる。
タイヤはノーマルですか? FF? やめておいた方がいいと思います。もちろんご自由ですが、私なら絶対に行きません。
実際、途中で後にも先にも進めなくなっている車を目撃した。幸いすでにパトカーが来ていたので、そのままやり過ごした。
私が無事に走り終えたのは、運がよかったからにすぎない。
つくづく「引き返す勇気」ということを考えさせられた。こんな時でも臆病なのだ。
今思えば、よくもまあ、雪道を走るのが初めてかもしれない東南アジア人?のアドバイスに従ったと思う。
結局は背中を押して欲しかっただけのことなのだが、それにしても。
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