■手間暇とコストをかけて現場を混乱させる改悪
腹立たしいことや嫌なことは、できるだけ書きたくないんだけれど・・・
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大学入試センター試験の後継として2020年度から導入する新テスト「大学入学共通テスト」(仮称)の実施方針案を文部科学省が公表した。
これはいったい何なのか。
当事者である高校生(実際に影響があるのは今の中三からだが)および高校と大学の教員に賛否を問えば、少なくとも80%以上が「変更しない方がマシ」だと回答するのではないだろうか。
ものすごい手間暇をかけて多額の予算を使い、別に変えなくてもそれほど問題のないセンター試験を改悪する。
特に、点数を「段階別で示す」というのは筋が悪い。「1点刻みが良くないから」と言うのだが、その「段階別」の境界は、1点刻みでしかありえない。それを2次試験の出願資格などに使うことを想定すると報道されている。それなら結局、1点刻みで受験資格を奪うことになる。そんな簡単なこともわからないのだろうか。
しかも、この「段階」は、各大学の入学者選抜の視点から見れば、ほとんど意味がない。どの大学も、その難易度に応じて、段階別としては横並びの受験生が大多数を占めることは自明で、そうすると、結局は2次試験の成績だけでほぼ合否が決まることになる。それでは、単に受験資格獲得のための試験になる「共通テスト」も形骸化せざるをえない。
その他、英語の試験を民間に丸投げ(しかも複数の民間試験を想定)とか、国語と数学の記述式問題の採点も業者に委託とか、「何を考えているのだ」という内容がずらずら並ぶ。
こんなことをしてまでセンター試験をやめたいのなら、一次試験はすっきり廃止して、大昔の入試制度である各大学の個別試験だけにしてはどうか。
その方がコストもかからず、混乱も少なく、「今回の案よりは」歓迎されるのはまず間違いないと思う。
個人的には、かつて英語のリスニングを試験に加えたように、センター試験の中味をよりよいものにブラッシュアップしていくしかないのかなあと思うけれど。
(↓に書いたような馬鹿な「改革」圧力にさらされ、実際に何度も中小の「改革」を施されながら、それでも共通一次から数えてセンター試験が40年近く生き残ってきたのには、やはり生き残るだけの理由があったのだろうと思う。それがとうとう、今回の「改革」でとどめを刺されようとしている。)
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この件に限らず、この国の教育行政(特に高等教育)は、やらない方がマシな「改革」を次々と打ち出し、大学はそれに翻弄され、結果は惨憺たるものなのに(法科大学院を見よ)、「だからこそ?また次の改革を」という悪循環を繰り返している。
なんだか、戦時中の日本軍を思い起こさせ、それもこれも日本人の(日本の官僚組織の?)メンタリティが変わっていないせいなのかと暗澹たる気持ちになる。
実際に死屍累々とはならないだけマシなのかもしれないが、ほんとにもう、どうしてこうダメなんだろう?
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