■それぞれの人生
今年のゴールデンウィークに東北をぐるっと回ったとき、信州を経由した。
その時に北アルプスの絶景を見せてくれた峠に、今回も立ち寄った。
先客の一人と何気なく言葉を交わし始めると、その方が白馬村在住だとわかった。生まれ育ちは大阪なのだが、こちらに住んで「写真やデザイン」の仕事を(おそらく)個人でなさっているという。
フォルクスワーゲン ゴルフ ヴァリアントの4motion に乗っていらっしゃるので、経済的にも困窮していないのは明らかだ。
「理想の人生ですねぇ。私なんかサラリーマン以外考えられません」と心底羨ましくて申し上げると、
「いえいえ、来月の仕事があるかもわかりませんし」とおっしゃる。そう言いながら、もう何十年か写真家を続けているらしい。
「アルプスなんかにも登って写真をお撮りになるんですか?」
「撮りますよ。山渓(ヤマケイ)さんの仕事なんかもありますから」
「いやぁ、ほんとに理想の人生ですねぇ」
「いえでも、定年がないとはいえ、いつまでも山に登れるわけでもありませんし」
確かに、60代前半に見える。
そして、そうだろうなあとは思うものの、やっぱりにわかには納得しがたいのが次の言葉だ。
「この辺の景色なんかもぜんぶ飽きちゃってて、何とも思いませんからね」
じゃあどうしてここに車を停めて北アルプスを眺めているんですか、とは訊かなかった。その日はどっちにしても大した景色ではなかったのだが。
「ご存知かどうかわかりませんが、この下のアルプスがきれいに見えるところに、ポツンとカフェがあるんですよ。ああいうのをやってみたいなと思ったりもするんですが」と私。
「おやりになるのは自由ですけど、お客さんは来ませんよぉ。たまに来たらラッキーくらいに、趣味でやるんならいいですけど」
まあ、そんなものだろう。写真とデザインを なりわいにして白馬村で暮らせる人だって、いったい何人いることか。
別れてすぐ、名刺でももらっておけばよかったと思った。もしかしたら名のある人かもしれないが、名前も知らずに後で検索してみてもわからなかった。
___
その日の夕刻。
次の日もその次の日も天気はよくなさそうだし、それなりに目的は達した気がしてなんだか面倒くさくなり、1週間ほど続く予定だった信州旅行をたった2泊で切り上げることにした。
それほどの景色も望めなかったとはいえ、要するに飽きたのである。たった3日で。
白馬在住の写真家が飽きてしまうのは当然だ。
先方の人生は羨ましいけれど、飽きることが納得できればまあ、お互いそれぞれの人生なのかと考えざるを得ない。
でもやっぱり、「白馬在住の写真家」って、絵に描いたような理想の人生だよなあ・・・という思いは拭いきれないんだけれど。
___
何にせよ、明日からまた仕事だ・・・
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