●「土嚢袋」?
「報道ステーション」を見ていると、広島市安芸区からのレポーター(といってももちろんアナウンサー)が、土嚢を指して「どのうぶくろ」と言っていた。
「うわっ」と思っていると、もう二度ほど、「どのうぶくろ」と繰り返した。もちろん、「土嚢袋」と書くのだろう。
森川アナの「すごい甘い」という発言を「『すごく甘い』ですね」と訂正した富川アナも、「土嚢袋」には異議を唱えなかった。
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「氷嚢」「背嚢」「胆嚢」「嚢胞」などからわかるように、「嚢」という漢字は「ふくろ」という意味で、土嚢とは「土を入れたふくろ」[広辞苑 第七版]のことである。
「土嚢袋」では「土を入れたふくろふくろ」になってしまう。
「どのうぶくろ」は、みごとに融合アクセントで発音されていたし、「ぶ」と連濁しているので、完全な一語として扱われていたことがわかる。
コトバに関しては保守的な小言ジジイになってしまって恐縮だが、実は、「嚢」の字も気持ち悪い。
「囊」であるべきだろうと思うのだが、ATOKが「環境依存文字」だと警告してくるので、仕方なく「嚢」を使っている。どうして康熙字典体の正字の方が「環境依存」なんだよ。
あ、「依存」は「いそん」と濁らないでお読みくださいね(笑)
話は違うが、今日も職場のわりとフォーマルな会議で「ほぼほぼ」と発言した人がいたのにはちょっと驚いた。
新しい語をどんどん取り入れていく感性は羨ましくもあるのだが。
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さて、念のためにと「土嚢袋」を調べてみると、もちろん辞書には載っていないが、たとえばアマゾンではまさに「土嚢袋」が売られていた。ヨドバシカメラでも楽天市場でも「土のう袋」が売られている。ふたたびアマゾンに戻ると、やはり「土のう袋」もあった。
もはや「嚢」が袋だとは意識されなくなってきているのだろう。
(まさか、土を入れて「土嚢」を作るための袋が「土嚢袋」と呼ばれて使い分けられている・・・ということはないと思う。いずれにせよ、冒頭のレポーター(アナウンサー)が「土嚢袋」と呼んでいたのは、すでに土が入って積み上げられている土嚢であった。)
確かに書くのは難しい漢字だが、読むのにそれほどの困難はないはずだ。「土のう袋」などと書いたのでは、「のう」が何なのか、よけいにわからなくなってしまう。下手をすると「つちの/うぶくろ」などと読みかねない。
ただ一方で・・・
「コトバの民主化」みたいなことも常に考えている。人々の日常から離れた特権的言語使用はなるべく解体していくべきだとも思う。
「土嚢」が読めて意味がわかるのが標準的だと考えることが、もはや現実と乖離しているのだとすると、「土嚢袋」も仕方のない言語変化なのかもしれない。
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