●かゆいところに手の届かない記事
夕刊を読んでいて、何ともフラストレーションの残る記事を2つ見つけた。
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その1
「焼酎銀行 利子もうまい」というもので、高知の四万十町にある酒造会社が「四万十川焼酎銀行」を運営しているという記事である。
よそへ移転した銀行の建物を居抜きで使っているが、もちろん銀行ではない。「遊び心で銀行業務をまね」て、焼酎を預けておくと利子として年5%分の焼酎がプレゼントされるというような企画で話題だという。
何かひっかからないだろうか。
私はすぐ、「銀行ではない会社が銀行を名乗っていいのか」と疑問に思った。記事はそのことにまったく触れていない。
調べてみると、当然のことながら、銀行法第六条の2項に「銀行でない者は、その名称又は商号中に銀行であることを示す文字を使用してはならない」とある。
「四万十川焼酎銀行」は明らかに違法だ。
だが、それは「名称又は商号」ではなく、単なる愛称だとか何とか、そういうふうにうまく法の網を逃れているのかもしれないとも思った。
記事には、でかでかと「四万十川焼酎銀行」の看板を上げ、正面にもそう大書した建物が写っているけれど。
しかし!
件の会社のWebサイトを見てみると、なんと、「商号 株式会社四万十川焼酎銀行」とあるではないか。
ということは、「四万十川焼酎銀行」という名前で会社登記がされているということだ。銀行法に違反する商号を国が登記したということなのか? まさか。
その疑問に答えずして、何の新聞記事か。
何百万人もが読むのだから、万人単位で同じ疑問を持つ者がいるはずだ。
その2
「新天皇パレードは国産車」という記事。
1990年、現天皇の即位を披露する際に購入された約4千万円のロールスロイスは、皇太子夫妻の成婚パレードで1993年に使われた後、2007年に廃車となってお蔵入りしているそうだ。
天皇家なのだからまあ当然かとも思うものの、4千万の車を2回しか使わないとは豪儀な話である。17年分の維持費だってかかっただろう。
それはそれとして、今回の問題は、来秋開かれる新天皇即位のパレード「祝賀御列の儀」に、「国産オープンカーを使う方針を固めた」という点だ。
即位した天皇がパレードに使う国産オープンカー???
政府は「国産の新車を購入することにした」というのだが、そんなオープンカーは存在しない。まさか、マツダのロードスターでやるとはとても思えない。
可能性があるとすればただ一つ、今年フルモデルチェンジしたトヨタのセンチュリーしかありえない。
だが、センチュリーにはオープンカーがないのだ。
Yomiuri Online には「発注先のメーカーは今後、検討する」とあるが、たとえば日産が、天皇パレードにふさわしい車を開発するとはとても思えない。そもそも、どのメーカーにしても、これから開発するのは不可能だ。
結局、センチュリーのロイヤルパレードバージョンをトヨタがオープンカーとして製作することになるに違いない。それだって今からではどうなのかと思うが、もう裏で話がついて開発の目途も立ったから、「国産オープンカーを使う方針」を発表できたのだろう。
穿った見方をすれば、今年新型センチュリーを発売したのも、即位パレードに使用することと抱き合わせた戦略かもしれない。
存在しない「天皇の即位パレードに使う国産オープンカー」の話をするのなら、そこに触れないで逃げたり(朝日夕刊)、発注先のメーカーは今後検討するなんて記者発表通り?に垂れ流したり(Yomiuri Online)するだけではなく、もう少し突っ込んだ取材をして「今年フルモデルチェンジしたトヨタセンチュリーを改造したオープンカーを予定している」くらい書いてこそのジャーナリストである。
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記者たる者、もう一歩踏み込んで、読者に疑問を抱かせないような、かゆいところに手の届く記事を心がけてほしい。
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コメント
「新天皇のパレード車は「センチュリー」 市販車を改造」(asahi.com)だそうです。
やはり思った通りでした。自慢にもなりませんが・・・
投稿: Wind Calm | 2019.01.18 19:27