■やっぱりひどい翻訳の話
「マン・ダウン 戦士の約束」(アメリカ映画)を見た。
妻子を国に残してアフガニスタンに赴任した海兵隊員が過酷な経験をして・・・という映画なのだが、終わってみればというべきか、意外にも?社会派ドラマであった。
映画の最初のタイトルバックに描かれ、物語の途中でもときおり挟みこまれる荒廃した故郷の風景の意味をはかりかね、「主人公がアフガニスタンに行っている間にアメリカが最終戦争に巻き込まれた」というSFなのか・・・という思いも過ぎるが、まさかそんなはずはなく、終末ですべて回収されるようになっている。
が、しかし、やはりちょっとやりすぎというか、わかりにくい構成だなあとは思う。
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それはそれとして、久しぶりに映画のことを書こう(見るのはけっこう見ている)と思ったのは、映画の冒頭で字幕翻訳にがっかりし「これでは先が思いやられる」と感じたからだ。
タイトルバックが終わり、場面転換して本編が始まって2つ目の字幕(一つ目は "Come in" に対する「入れ」)が、もう誤訳なのである。
アフガンの戦場でトラウマティックな経験をした主人公のカウンセリングを担当するペイトン大佐をゲイリー・オールドマンが演じているのだが、それを「大尉」と訳しているのだ。
原語は captain で、確かにこの語は海軍以外では大尉だから面倒なのだが、ペイトンはまさに海軍大佐なのである。
制服には名前とともに U.S. NAVY と、そしてどの軍であっても大佐を表す鷲の階級章が刺繍されている。
そもそも、映画撮影時に57歳だったゲイリー・オールドマン(しかも軍医?)を大尉だと訳そうとして、違和感を持たなかったのだろうか。もしほんの少しでも引っかかりがあれば、辞書を引くだけで(プロならば引かなくても)解決するのである。
プロの翻訳者として戦争映画に字幕をつけようという人物が、こんな初歩的な間違いを犯すとは到底信じがたい。
案の定というか、ウィキペディアにも「ペイトン大尉」と書いてある。こうして誤訳が既成事実となっていくのだろうか・・・
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ここまで書いて、以前、似たような?誤訳をした翻訳者にあきれ果てて腹を立てたことを思い出した。
読み返すと(今回よりひどい誤訳だ)、われながら腹立ち紛れに書いているのがよくわかる。
今回はあれを繰り返すまい。
ただ、救いがないのは・・・
前回と今回とが違う翻訳者だということである。あ、以前書いたERの大誤訳も別人だ。
(念のため、私は「ミス」をあげつらっているのではありません。)
この3人とは別に、誤訳で有名な大御所もいる。
ほんとにもう、「この業界の翻訳の質が向上することを願ってやまない。」
(Man Down, 2015 U.S.A.)
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