« 2024年1月 | トップページ | 2024年3月 »

2024.02.26

◆「お釣り」雑感

 日曜日の朝日歌壇に

  物買へばお釣りあること知らぬまま幼子育つデジタル社会 (酒田市)朝岡 剛

という歌が掲載されていた。

 身近に幼子はいないが、なるほど、いればそうなるかもしれないと感心させられた。

 息子がまだ幼かったころ、ガレージの前にある水道から水が出せないのを見てびっくりしたことがある。
 カランの栓をひねる旧来のタイプだったのだが、幼いといっても小学校低学年、まさかそんなことができないとは思いもしなかった。
 だが、考えてみると、家のほとんどの水栓はレバーの上げ下げになっていて、ひねるタイプはガレージ前と庭だけだった。保育園の水栓もレバーだったのだろうか?

 昨秋、自宅の水回りをリフォームした際、キッチンの水栓は自動にした。
 これは私自身のことだが、そのせいで、手動の洗面所でも手を突き出して待ってしまうことがある。
 今のところ、1秒以内には気づくものの、あっちもこっちも自動水栓がふつうになれば、手動で水を出す方法を知らぬまま育つ幼子も増えてくるかもしれない。

 さて、お釣りの話。

 最後にお釣りを受け取ったのはいつだろう・・・と考えて、もしかすると昨夏のニュージーランドではないかと思った。
 現金が必要な機会が2度あり、キャッシングで現地通貨を引き出した後、残った10NZDを使って土産物を買ったときに受け取ったお釣りの1NZDがそれで、持っている唯一のニュージーランドドルでもあり、大事に机の引き出しにしまっている。

 それ以降、お釣りをもらった記憶はない。もしほんとうにそうだとすると、半年くらいお釣りを受け取っていないことになる。
 あんまり意識してはいないが、私(たち?)はそういう社会を生きているのだ。

 ニュージーランドのコインが生涯で受け取った最後のお釣り・・・ということになればなかなか楽しいエピソードになるのだが、残念ながらそうはなるまい。
 そうだ!、今後、現金での支払いでお釣りが出そうなときは、家族に支払わせるようにしようか(笑)

 それはともかく、「物買へばお釣りあること知らぬ」「幼子」っていくつくらいなんだろう?

 まだ親がすべての支払いをしている年齢か、それともデジタルデバイスで自ら支払っている年齢か。
 いずれにせよ、その間に、現金で買い物をする数年間があると思うんだけれど・・・

 その際にお釣りの経験を積んでおくことは、意味のあることなのか、それとも、どうでもいいことなのか。

| | | コメント (0)

2024.02.20

◆アンコールワット神殿の向き

 父親が撮影したアンコールワット遺跡(カンボジア)の写真をリビングに飾っている。
 おそらくは、亡父もっともお気に入りの一枚で、パソコンのデスクトップピクチャ(壁紙)にもなっていた。
 朱色の僧衣を着た少年僧が左下に佇んでる。この子も今は高僧になっているかもしれない。

 さて、先日の朝日歌壇に

  クメール朝の石の神殿に印された方位はスマホの磁石とぴったり (東京都)上田 結香

という短歌が掲載されていた。

 「クメール朝の石の神殿」がアンコールワットかどうかは定かではないが、まあその可能性は高いだろう。

 ともあれ、これを読んでまず思ったのは、「そんなバカな」であった。

 ご承知の方も多いと思うが、方位磁石が指す北は「磁北」と呼ばれ、実際の北(「真北(しんぽく)」)とはかなりのズレがある。
 私の住んでいる場所では8°以上西偏している。それだけ違えば、「ぴったり」に見えるはずがない。

 クメール朝の神殿がいつ建てられたのかはわからないが、羅針盤(方位磁石)を利用してそれにあわせたとも思えないので、おそらくは天体の運行から真北を求めて建てられたはずだ。

 ただ、調べてみると、羅針盤は「11世紀に中国で発明され、13世紀末までに全世界に広まった」(wired.jp)とあり、クメール朝は「九世紀から一三世紀にかけてアンコール−ワット、アンコール−トムなどの造営を行な」(日本国語大辞典)ったとあるので、造営にあたって羅針盤を利用した可能性も否定できない。

 でも、せっかく正確に東西南北にあわせて神殿を建てたいときに、たとえば太陽の南中がずれるような建て方をするだろうか。

 そう考えると、たとえ羅針盤を知っていたとしても、真北を基準に建てたのではないかと思える。

 なのに、「スマホの磁石とぴったり」・・・

 と考えて、ハタと思いあたった。もしかして、アンコールワット周辺では、偏角がほとんどないのではないだろうか。

 ネットで調べようとしても、出てくるのは日本の情報ばかり。まあ、日本語で検索するから当然なのだが、信じられないほど細かく調べられていることに感嘆するものの、カンボジアの情報はない。

 しばらくして、世界の偏角を即座に知ることができる便利なサイトがあることを知った。

 そこで調べると、アンコールワット遺跡の西偏は1°未満!
 なるほど、「スマホの磁石とぴったり」になるわけだ。
 ___

 ちょっとした疑問を持ち、これほどすっきり解決するのも珍しくて気持ちが良い。

 あ、でも結局、逆にというか、真北を基準に建てたのか磁北を基準に建てたのかは謎のまま残ってしまった(笑)

 

 追記:

 あとで気づいたのだが、もしかして「スマホの磁石」というのは、実は方位磁石など使っておらず、GPS情報に基づいて方位を示しているのではないか・・・と思いはじめた。
 実際、私の古い iPhone 7 Plus でも、設定に "Use True North"(真北を使う)というのがあり、忘れていたが、私もオンにしていた ^^;
 もしかすると、短歌の作者の上田さんも同様の設定をしていらっしゃるのかもしれない(カンボジアではどちらでも大差ないけれど)。

 ところが、調べてみると、やはり磁石を使っているようだ。Appleのサイト

重要: コンパスの正確さは、磁気的な妨害や環境的な妨害によって悪影響を受けることがあります。iPhoneのEarPodsに含まれる磁石が、ずれの原因になる場合もあります。 

とある。

 それでも、今の iPhone は方角だけではなく、緯度経度や標高まで表示できるらしいので、GPSを使っていることは明らかだ。
 どうして方位には GPS を使わないのだろう? 使えないときだけ磁石に頼るとかでもいいのに(そうなってるのかな?)

 →一箇所に静止している場合、経緯度の変化がなく方位を計算できないため、GPSは方位を示すことができないそうです。

| | | コメント (0)

« 2024年1月 | トップページ | 2024年3月 »