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2024.02.20

◆アンコールワット神殿の向き

 父親が撮影したアンコールワット遺跡(カンボジア)の写真をリビングに飾っている。
 おそらくは、亡父もっともお気に入りの一枚で、パソコンのデスクトップピクチャ(壁紙)にもなっていた。
 朱色の僧衣を着た少年僧が左下に佇んでる。この子も今は高僧になっているかもしれない。

 さて、先日の朝日歌壇に

  クメール朝の石の神殿に印された方位はスマホの磁石とぴったり (東京都)上田 結香

という短歌が掲載されていた。

 「クメール朝の石の神殿」がアンコールワットかどうかは定かではないが、まあその可能性は高いだろう。

 ともあれ、これを読んでまず思ったのは、「そんなバカな」であった。

 ご承知の方も多いと思うが、方位磁石が指す北は「磁北」と呼ばれ、実際の北(「真北(しんぽく)」)とはかなりのズレがある。
 私の住んでいる場所では8°以上西偏している。それだけ違えば、「ぴったり」に見えるはずがない。

 クメール朝の神殿がいつ建てられたのかはわからないが、羅針盤(方位磁石)を利用してそれにあわせたとも思えないので、おそらくは天体の運行から真北を求めて建てられたはずだ。

 ただ、調べてみると、羅針盤は「11世紀に中国で発明され、13世紀末までに全世界に広まった」(wired.jp)とあり、クメール朝は「九世紀から一三世紀にかけてアンコール−ワット、アンコール−トムなどの造営を行な」(日本国語大辞典)ったとあるので、造営にあたって羅針盤を利用した可能性も否定できない。

 でも、せっかく正確に東西南北にあわせて神殿を建てたいときに、たとえば太陽の南中がずれるような建て方をするだろうか。

 そう考えると、たとえ羅針盤を知っていたとしても、真北を基準に建てたのではないかと思える。

 なのに、「スマホの磁石とぴったり」・・・

 と考えて、ハタと思いあたった。もしかして、アンコールワット周辺では、偏角がほとんどないのではないだろうか。

 ネットで調べようとしても、出てくるのは日本の情報ばかり。まあ、日本語で検索するから当然なのだが、信じられないほど細かく調べられていることに感嘆するものの、カンボジアの情報はない。

 しばらくして、世界の偏角を即座に知ることができる便利なサイトがあることを知った。

 そこで調べると、アンコールワット遺跡の西偏は1°未満!
 なるほど、「スマホの磁石とぴったり」になるわけだ。
 ___

 ちょっとした疑問を持ち、これほどすっきり解決するのも珍しくて気持ちが良い。

 あ、でも結局、逆にというか、真北を基準に建てたのか磁北を基準に建てたのかは謎のまま残ってしまった(笑)

 

 追記:

 あとで気づいたのだが、もしかして「スマホの磁石」というのは、実は方位磁石など使っておらず、GPS情報に基づいて方位を示しているのではないか・・・と思いはじめた。
 実際、私の古い iPhone 7 Plus でも、設定に "Use True North"(真北を使う)というのがあり、忘れていたが、私もオンにしていた ^^;
 もしかすると、短歌の作者の上田さんも同様の設定をしていらっしゃるのかもしれない(カンボジアではどちらでも大差ないけれど)。

 ところが、調べてみると、やはり磁石を使っているようだ。Appleのサイト

重要: コンパスの正確さは、磁気的な妨害や環境的な妨害によって悪影響を受けることがあります。iPhoneのEarPodsに含まれる磁石が、ずれの原因になる場合もあります。 

とある。

 それでも、今の iPhone は方角だけではなく、緯度経度や標高まで表示できるらしいので、GPSを使っていることは明らかだ。
 どうして方位には GPS を使わないのだろう? 使えないときだけ磁石に頼るとかでもいいのに(そうなってるのかな?)

 →一箇所に静止している場合、経緯度の変化がなく方位を計算できないため、GPSは方位を示すことができないそうです。

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