★ヒッチハイカーとサイクリスト
ヒッチハイカーを乗せてあげたことはない。
一度だけ、フランス北部をドライブ中に、気の迷いからブレーキを踏んでスピードを落とし、家人に咎められて再加速したことがある。
喜んで駆け出すカップルをミラー越しに見ながら、申し訳なさでいっぱいになった。
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アイスランドでは、すでに50人くらいのヒッチハイカーを見たかもしれない。それよりやや少ないサイクリストにも遭遇した。後者には特に、年配の人も多い。
今日の後半など、210kmにわたって道沿いには店もトイレも何もなかったのだが、そんなところでも自転車を漕いでいる人がいた。
いったい、どんなふうに日々を過ごしているのか、想像するのも難しい。
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長い道中のつれづれに、「彼(女)らはなぜヒッチハイクをするのだろう」と考えていた。
経済的な理由も大きいとは思うが、それよりはむしろ、生き方というかそっちの問題だという気がする。
彼らだって、ヒッチハイクでアイスランドまで来たわけではない。また、昔のように、貨物船に安い値段でもぐり込んで・・・というわけでもあるまい。
結局は私と同じように、エコノミークラスの飛行機で飛んできたはずだ。
たとえば2週間の旅行をするのに、小さい車を借りれば10万円もかからない。飛行機代が払えるなら、もう少しアルバイト?をがんばって車で走れば、あてのないヒッチハイクなどしなくてもよいのである。
にもかかわらず、彼らはヒッチハイクをする。
それはまず、旅行期間が2週間とか、そんな取るに足りない長さではないからだろう。たぶん、最低でも2〜3か月、もしかすると3年くらいかけて世界を回っている途中なのかもしれない。
それに・・・
いや、結局のところ、ぼくにはできなかったし、これからもできないことを彼らはやっているのだ。それには素直に敬意を表したい。
サイクリストの方なら、自分の脚で走破したいという実感がほしいことはわかる。それでも、アップダウンの激しい、ときに未舗装の道を、文明に出会うまで(たとえば)210km走るとすれば、2日がかりになるだろう。
彼らもまた、ぼくにはできないことを・・・
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それにしても。
今回の旅行だけではなく、ヒッチハイカーを乗せてあげているところを見たことがない。どのくらい待てば乗せてくれる車が現れるのだろう。
ぼくにだって、乗せてあげたい気持ちは十分ある。
でも、第一にレンタカーの約款で禁止されているし、一人ならともかく、二人乗せることは物理的にほぼ不可能だ。彼らの荷物は大きいので、一人だってどうだか、という感じである。トランクはすでに、ぼくらの荷物だけで一杯なのだから。
それに、あれこれ考えるうちに、実際に乗せてみないとわからないかもしれない問題に気づいた。
彼らはかなりの臭気を発しているに違いないのである。ときにはたまらないくらいに。
もしかしたら、ほとんどだれもヒッチハイカーを乗せてあげない最大の理由はそれかもしれない。車内が汚れるとか臭いとか。
残念ながら、彼らの素晴らしい生き方をもってしても臭気や汚れを消し去ることはできない。
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